軒下のツバメの巣
「あ~~~~~痛い」
「想定通りじゃないの」
「そうだけどさあ」
鈍い痛みに悶えながら窓の外を眺める。夕方前の空はまだまだ明るくて誘われているようだけど、体が痛すぎてそれどころではなかった。
何故にこんなに体が痛いのか。潮干狩りによる筋肉痛である。今日は早朝から家族で潮干狩りに行った。そして狩りまくってから昼ごはんを食べて帰ってきた。疲れたからと転寝をしていたのだけど体の痛みで目が覚めた。
「いーたーいー」
「お風呂行ってくれば」
「痛すぎて起き上がれない」
双子の紺は呆れたようにため息をついているが、彼女も十分痛いようでベッドに突っ伏して動かない。両親が帰宅してすぐに交代で風呂に入り、その後熱心にマッサージをしていた理由がよく分かった。これだからおっちゃんとおばちゃんは……だなんて苦笑していた私がお子様でした。
「紺~~~なんとかして~~~~~」
「無理だから。私だって相当痛いんだよ。でもどうにもならないからじっとしてるんだよ」
「ぐぬぬ。湿布……は風呂上がってから貼りたいし。マッサージ……も風呂で温めてからだし。あー先に風呂入れば良かった」
後悔先に立たず。これはもう大人しく横たわって、痛みになれたら風呂に行くしかない。ああ痛い。
少しでも楽な体勢を求めてゴロンと仰向けになる。と、見慣れないものが窓の外、軒下に見えた。
「あれ……なに?」
「なにが?」
「窓の上のとこ、泥?」
「……ツバメの巣?」
「あーそれだ」
言われてみればそうだ。しばらく見ていると親ツバメが餌を咥えて戻ってきた。そしてすぐに去って行く。あー平和だ。とても、とても平和。私の筋肉痛以外は。
空は青く雲は白い。ツバメは餌を運び私の筋肉は悲鳴を上げている。
「うん。風呂に行ってくる」
「行ってらっしゃい」
風呂から出たらおやつ食べよ。もう私のところに親は餌を運んでくれないけど。でもちゃんと私の好きなものは用意されていると知っている。