赤い顔の右大臣が一番好き
サークルのオンライン飲み会で一番顔を赤くしている彼。飲みすぎたのではない。単なる下戸だ。たぶんビールをコップに半分も飲んでいないと思う。確認しに行けばいいのだけど今行くのはちょっとね。他の人にあれこれ言われても嫌だし。だからこっそりメッセージを送る。
『大丈夫?』
レスポンスは早い。
『ダメ』
そっかー、ダメかー。追加でオンライン接続を切って飲むのを止めるようにメッセージを送り自分も適当なタイミングで切る上げる旨を伝える。
そして30分ほどたってから彼の様子を見に行くと、彼はソファで伸びていた。
「大丈夫?」
「ダメ」
メッセージと同じやり取りを繰り返してから適当に部屋を片付ける。サークルのメンバーは知らないけど私たちは同棲している。というかハトコなのだ。遠い親戚。なので同棲、というより親が勧めた同居であり、予行練習でもある。なんのって、結婚の。恐ろしいことに、この令和の時代に親の決めた許婚なんてものが現存しているのだ。マジかよ。自分のことだけど。
でも別に構わない。私は彼が嫌いじゃないし、むしろ有りだし、向こうもそう嫌そうではない。そこそこ頭も学歴も良くて、親戚だから家柄も問題なく、つまり親同士の反対やいがみ合いもない。でもって顔と性格はめっちゃ好みとくれば特に反対する理由もないのだ。
一つ難点を上げるとすれば彼がこのように下戸で、私がうわばみであることくらいだろうか。それも別に気にすることではない。飲みたい人は飲む。飲みたくない人は飲まない。それだけのことだ。
「ねえ」
「あ、起きた? 大丈夫?」
「いやダメだけど。さっきの飲み会楽しかった?」
「別に」
「ごめん。俺のせいでゆっくり楽しめなくて」
「馬鹿だな」
「ごめん」
「そうじゃない」
「え」
「私は君と飲んだり食べたりするのが好きだから、君がいなくて楽しくなかった」
「そっか」
「だから明日の夜はおいしいもの食べよう」
「わかった」
まあ、そういうことだ。何を食べるかじゃなく、誰と食べるか。言い古されているけれど、そういうことなのだ。