黄昏時の語源、知ってる?
夕暮れ時の人気の無い校舎。秋も深まり日の入りが早いからか、時間の割に廊下は薄暗い。先生に頼まれてプリントのとりまとめをしていたら、すっかり遅くなってしまった。
「うう、早く帰ろう」
走りはしないけど、それでも出来るだけ早足で昇降口に向かう。と、廊下の向こうに人影が見える。こんな時間に誰だろう?
「……?」
やや長身の……男の人、かな? 暗くて良くわからないけど、たぶん生徒のようだ。気にせず横を通り過ぎてしまおうと、小走りで近付く。
しかし近くまで来て違和感を覚える。……。なん、だろう? 何かがおかしいような……?
「……!?」
彼の、影が変だ。なんだか揺らめいている。なにより色が黒ではなく……赤い……!?
「……っ」
「藤丸?」
「え……渡辺先輩?」
振り返ったその人は、私がよく知る渡辺先輩だった。今までの緊張も相まって、一気に安心する。なんだ、何でも無い……ただ私が薄暗がりに怯えていただけじゃないか。
「こんな時間に、まだ残っていたのか」
「ちょっと先生に頼まれちゃって。今から帰るところです」
「その方が良い。日が暮れるのが早いからな」
そう言いながら先輩はチラリと足下に目をやり……それからすぐにこちらに視線を戻した。気になって私もそちらを見ようとするが、先輩に
「昇降口まで送ろう」
と言われて、結局見ずに終わる。
本当はその時に見てしまえば良かったのだ。私の影に……いや、私の影の右手部分が赤く光っていたことに、その時に気付いておくべきだった。なんて、今更だけど。
しかし当時は気付かず、先輩に促されて昇降口に向かい、部活に戻るという先輩と笑顔で別れた。
「誰祖彼……か」
その後に先輩が呟いたことは、もちろん私の耳には入らなかった。




