秋刀魚と麦酒で乾杯
「っ、かんぱーい!!!」
ジョッキに輝く金色の光を重ね合わせる。そして一気に飲み干す。あーおいしい! しかし、向かいの席に座る先輩は呆れたような顔をする。
「……お前、ジンジャーエールをよくもそんな美味そうに飲めるなあ」
「え、激ウマですよ?」
「ここはビールだろうが」
そう言って先輩はビールが並々と注がれたジョッキを煽る。うまーい、とジョッキを卸す頃には先輩の口元に白いヒゲがついている。
「そんでもってサンマ! 秋だから!」
「仰るとおりです。先輩。秋にはサンマ! 間違いない!」
そして二人でサンマコースを堪能する。凄いんですよ、サンマコース。焼きサンマにサンマの刺身に肝醤油なんかもある。このね! 肝の苦みが良いんですよね!
「お前、見た目はちびっ子女子なのに、好みはおっさんなんだよなあ。あん肝とか好きそう」
「よくご存じですね。あん肝、大好物ですよ」
「マジおっさん」
リアルおっさんに言われたくないなあ。でも私の好みがおっさんなのは間違いないし。
「そういう先輩はどうなんですか。お好きな食べ物は?」
「……冷や奴」
「ええ」
めっちゃシンプルなのきた。冷や奴って好きとか嫌いとかの好みがあるものだとは思ってなかったわ。
「いや、冷や奴は好きですけど」
「うまいだろ、冷や奴。鰹節と青ネギ乗せてさあ」
「いいですねえ。真夏ならミョウガとショウガもお願いします」
そう言うと先輩の目が輝く。どれだけ好きなのか……?
「何だお前、解ってんじゃん!」
「そう言えば、実家ではニラを乗せていましたね」
「ニラ……?」
「ええ。刻んで塩をふったニラを乗せて、ごま油をかけていました」
「マジか」
それきり、先輩は黙ってしまう。ニラはダメだったのだろうか。私は結構好きだったけど。ごはんに乗せてラー油でもいけます。
「なあ」
「はい」
「結婚してくれ。お前となら美味い飯が食える気がする」
……この人は何を言っているのか? 結婚式で結婚の決め手は冷や奴、とか言うつもりなのか。
「でも共働きになるので、料理は半々ですよ。もしくは料理とそれ以外」
「任せてくれ。掃除と洗濯はお前より余程うまくできる。お前は机の上をもう少し片付けろ」
マジすか。有りなのか? ……有り、だな?




