良い匂いで贅沢気分
「めっちゃ良い匂いする」
「ああ?」
先輩の部屋で片付けをしていると、なんだか良い匂いがした。なんだろう? 片付けながら匂いの元を探すも、なかなか見つからない。結局全て片付けても、なんだか解らなくて気になる。
「先輩、なんか良い匂いしませんか?」
「匂いだ? 別に何にもしねえだろ」
先輩は相変わらずベッドに寝そべって雑誌をめくっている。こちらを向きもせずに、けど尻尾はゆらゆら揺れているので気にはしてくれているらしい。
「うーん? ……あ、解った。先輩ですね」
頭にはてなを浮かべる先輩に近付くと、ふわっと良い匂いがする。なんというか……香ばしい? 違うか。
「もうちょっと嗅いでて良いですかね」
「……お前、何されても文句言うなよ」
「はい?」
いきなり延びてきた先輩の手に捕獲される。気がついたら私は先輩の抱き枕だ。
「ちょ、あの!?」
「良い匂いなんだろ。好きなだけ堪能しろ。俺は寝る」
「え!!??」
そして先輩はマジで寝てしまった。誰か……助けて……。いやでも、この状態で誰か来たら、あらぬ誤解を招いてしまう。それはダメだ。その手の誤解をきっと先輩は放置するだろうから。
でも、待てよ。それはそれで有りでは? 私と先輩が付き合ってるとかそういう噂が流れても、先輩は放置だろうし、私は構わないわけだし……外堀から埋める的な……。
よし、そうと決まれば私は私で先輩を堪能させてもらおう。あーめっちゃ良い匂い。そして暖かい。ぬくい……。
「おい、いつまで寝てやがる」
「はえ」
「この俺に抱かれて熟睡とは良い度胸だな」
わあ。マジで寝てしまった。目の前では先輩がやや怒ったような顔でこちらを見ている。
「す、すみません。その……先輩が良い匂いで、暖かくて……居心地が良くて、つい寝てしまいました。いやー先輩の腕の中がこんなに安心するものだと思わず」
そう言うと先輩は呆れたようにため息を吐く。
「そうかよ。安心と言われて嬉しい男はいねえだろうが。ったく。でもまあいい。そんなに気に入ったならこれから毎晩抱き枕にしてやる。ありがたく思え」
……それを、私はどう受け取れば良いのか? え? 毎晩……???




