労う側から労われる側へ
「せんぱーい、お疲れ様です!」
「おや、どうしましたか」
「差し入れですよ」
錬金術の授業で作った、その名も『疲労回復薬』を先輩に渡す。一年生が作るものだから、そんなすごい効果は無いだろうけど……まあ、お守りとか気休めとか、そんな感じだ。
「ほう。ではさっそくいただきましょう」
そう言って先輩は渡した小瓶を一気に煽る。……躊躇とか、しないんだなと何故だか少し照れてしまう。
「どう、でしょうか……?」
「まあ、気休めですね」
「そうですね」
「でも……ええ、はい。確かに気分が良くなりました。ありがとうございます」
そう言って穏やかに微笑む先輩は、やっぱりかっこいい。むしろこちらの気力が回復するまである。
「しかし、あなたは少し疲れているようですね」
「え、あー、そうですね。今日魔法史の授業で小テストがあったので、昨晩遅くまで勉強していて。それで、ちょっと眠いです」
すると先輩は何故だか苦笑する。それから着いてくるように言われて、開店前のカフェのソファに座らされた。
「少々お待ちください」
大人しく待っていると、先輩がカップを持って戻ってきた。
「どうぞ、召し上がれ」
「いただきます。……わ、良い香り」
「リラックス効果のあるハーブティーです。眠ければ少し眠ってもかまいませんよ」
良い香りの湯気の向こうで大好きな先輩が優しい顔で微笑んでいる。ここは天国か何かだろうか。きっとそんなに違わないだろう。なんてことを考えている内に頭がぼんやりして、まぶたが重くなってくる。
「おやすみなさい、マイ・レディ」
「せん、ぱい……」
そして気がついたら夜中だった。わーマジかー。見慣れない部屋に辺りを見回すと、見慣れた背中が暗闇の先にあった。
「おや、目が覚めましたか」
「はい、あの……ここは?」
「わたしの部屋ですよ。カフェのオープン時間になってもお休みでしたので、失礼ながら運ばせていただきました。では行きましょうか」
行く、とは?
「あなたの寮ですよ。無断外泊するわけにはいかないでしょう?」
聞きたいこと、言いたいこと、いろいろあるけど……先輩に従おう。多分、これ以上は心臓が持たないから。




