残暑お見舞い申し上げます
「ざーんしょ、おーみーまい、もうしあげーます」
「……何をされているのですか?」
「うわ、びっくりした」
自分の寮で手紙を書いていたら上から声をかけられた。驚いてひっくり返りそうになるも、なんとか体勢を整えて顔を上げると、そこには慣れ親しんだ先輩がいた。
「えー、なんでここに居るんですか。入ってくるときには玄関のベルを鳴らして下さいよ」
「鳴らしましたよ。でも応答がなかったので、あなたに何かあってはいけない……と、入ってきたのです」
えー、ホントかなあ。でも先輩は変なとこで律儀だから本当かも。
「で、それは何ですか? ポストカードの様ですが」
「はい、これは残暑見舞いです。家族や友達に近況報告を兼ねて書いているのです」
「残暑見舞い?」
首をかしげる先輩に残暑見舞いについて説明する。すると、なるほどと頷いてから黙り込んでしまった。あまり良い予感はしない。
「残暑見舞い、なるほど。おもしろいイベントですね。我々も取り入れるにやぶさかではありません」
……きっとカフェの新メニューとか、そういうのに採用するのだろう。なんていうか、商魂たくましいなあ。でもさっぱりしたスイーツとかだったら楽しみだ。
「どのように取り入れるのですか?」
「そうですね……。例えば、先日教えていただいたミズヨーカンをパフェ風に出して残暑を名残惜しんだり……。サツマイモやカボチャのアイスでアフォガート風のデザートを作ってもうすぐ秋ですが残暑を乗り切る冷たすぎないスイーツを用意したり……でしょうか」
「えーさすが先輩! 天才ですね!」
「そうでしょう、そうでしょう。試作の味見は任せました。それでは」
言うや否や先輩は立ち去ってしまった。さっそく試作に取りかかるのかな? 熱心だなあ。あ、でも手紙……先輩に書いた手紙、渡し損ねた。明日、登校するときにポストに出しておこう。
翌日、授業を終えて帰寮すると郵便受けに私宛の手紙が来ていた。差出人は……先輩だ。
『残暑見舞い申し上げます』
そういうとこだよ! と胸が熱いのをごまかす。ほんと、そういうとこ、すっごい好き。私が出した手紙はいつ先輩に届くだろうか。先輩は、どう受け止めてくれるだろうか。




