五時のチャイム、帰る時間
キーン・コーン・カーン・コーン
聞き慣れたチャイムが鳴り響き講義が終わる。今日はいつもの授業に加えて時間特性による魔法の変化を学ぶ……ということで、追加で一時間の講義があった。
「はあ、遅くなっちゃったなあ」
先輩のところへ顔を出そうかと思ったけど、もうそろそろ閉店の時間だから、今からだと迷惑になっちゃうかな。諦めて寮へ向かうべく校舎を出ると……そこで先輩と出くわした。
「先輩! こんにちは。どうしてここに?」
「そろそろあなたの講義が終わるかと思って迎えに来たんですよ」
「ありがとうございます! でも、なんで?」
「さあ、なんででしょうね」
そうごまかして、先輩は先を行く。首をかしげつつも結局先輩についてカフェへと来てしまった。店内では他の従業員……と言っても生徒だけど……の人たちが片付けをしている。
「すみません、お片付け中に」
「こっちですよ」
そうして連れてこられた先は厨房の奥、先輩がいつも使っているソファとテーブルだった。座るように示された席にはお茶が湯気を立てていて、かわいらしいケーキも置いてある。
「これは……?」
「試作です。食べて感想を聞かせて下さい」
「いただきます」
ありがたくカップに口をつけると、ふんわりとした甘い香りが漂ってくる。
「わあ、良い匂い」
「そうでしょう。何種類かのベリーを配合しています」
先輩は満足げに頷く。続けてケーキを一切れ口に運ぶ。……これは、これは。
「おいしいっ。すっごい、すっごい! おいしいです!!!」
「そうですか! あ、いえ、そうでしょう、そうでしょう。当然です」
一瞬目を輝かせた先輩が、我に返ってどや顔するのがかわいかった。そしてケーキについての説明をしてくれる。
「ケーキの生地に紅茶と同じベリーを混ぜ込んでいるのです。しかし配合は変えていますので、また違った味わいを楽しめると思いますよ。それから……」
紅茶で鼻が、ケーキで口が、先輩の声で耳が、先輩の笑顔で目が、それぞれ幸せだ。でも、じゃあ、あと一つ。そっと手を伸ばして机の上の先輩の手に触れた。
「!!!???」
「あ、すみません。なんか幸せだったので、つい」
先輩は顔を赤くして黙ってしまった。離そうか、離すまいか。でも、離したくないな。




