野菜かな、キノコは
「何か良いアイディアはありますか?」
「いきなり何ですか先輩」
先輩が経営するカフェでお茶を飲んでいると、いきなりその先輩が向かいに座ってそんなことを言いだした。アイディア? 何の?
「秋らしいメニューを考えているのですが、なかなか思い浮かばないのですよ。こう……ありきたりでなく……でも秋らしい……」
そうろくろを回しながら説明する先輩だけど、具体性皆無で何も伝わってこない。
「秋と言えば栗とかサツマイモでしょうか」
「その辺りはスウィーツ系で採用する予定です。軽食を用意したいので野菜で何かあれば」
野菜。秋の野菜。なんだろう。秋……ニラは終わっちゃうし白菜には早いし……トマトもナスも終わってる。
「難しいです。あ、キノコは? キノコは秋ですよ。野菜……かどうかはわかりませんけど」
「キノコ、ですか」
私の発案に先輩が考え込んでしまう。的外れだったかなあ。
「いいですね、キノコ」
そう言うや否や、先輩は厨房の方へと消えてしまった。良かった、間違っていなかったみたいだ。しばらくお茶の続きを飲みつつ課題をしていると、先輩が戻ってきた。
「お召し上がりください。マイ・レディ」
「……て、照れますね」
しどろもどろになりながらも差し出された皿を見ると、そこにはキノコのパスタにサラダとミニグラタンまで乗っている。
「すごい! すごいです先輩! おいしそう!!」
「おいしそう、ではなく、おいしいのです」
「いただきます!」
先輩が自信満々に言うだけあって、どれもめちゃくちゃおいしいかった。おいしすぎて無言で完食してしまった。
「ごちそうさまでした」
「いかがでしたか?」
「はい、どれも大変おいしかったです。おかわり欲しいくらいです」
「そうですか」
ほっとした顔で先輩が胸をなで下ろしている。こちらとしても、お役に立てて何よりだ。
「あなたの発案ですから、あなたに最初に召し上がっていただきたかったのです。お口に合って何より」
「ありがとうございます。先輩のお役に立てて何よりです。マイ・ディア」
「!!!!???」
先程のお返しをすると、先輩は口をパクパクして固まってしまった。……かわいいなあ。




