胃袋の中の蛙、鳴き止まず
ぐう~~~~
そんな音が静かな図書室に鳴り響いた。はい、あたしです。そして誰も何も、もちろんあたしも何も言わないのに、どうして皆があたしを見ているのか。
「レディとしてのたしなみはないのですか」
冷たい目で見られてますます萎縮してしまう。
「う、すみません」
「まったくみっともない。そんな風に背を丸めているから余計に鳴るのです。背筋を伸ばしなさい」
先輩に言われたとおり体をまっすぐにすると、途端にお腹が静かになった。
「あれ、鳴らなくなりました」
「背を丸めると胃や腸が圧迫されて鳴りやすくなるのです。鳴るのが恥ずかしいからと体を縮こまらせるのは逆効果ですよ」
そう言う先輩はやはり冷たい目でこちらを見ているけど、その顔が優しく見えるのはあたしの甘えだろうか。
「何をニヤニヤしているのですか。あなたの調べ物に付き合っているんですよ。まあでも空腹はいけません。一度食堂で昼にしましょうか」
ああ、ほら。やっぱり先輩は優しい。これがニヤニヤせずにいられようか。
「はい。ご一緒します」
「当然です。昼を摂ったら、また続きですよ。今日中に終わらせるのでしょう? 明日以降は僕の用事にも付き合ってもらわないといけませんし」
「はい、どこまででもご一緒します」
そう答えると先輩は何故か怒ったような顔になる。なにか失礼をしてしまっただろうか。しかし先輩は顔を赤くして何も言ってくれない。
「あの?」
「……いえ、なんでもありません。あなたは、そういう……誰にでも親切ですからね」
少し寂しそうな顔で先輩が言う。上手く言えないけど、その顔はなんか嫌だ。
「まあ、基本的には誰にでも親切でありたいです。けど、先輩が最優先ですよ」
「だーかーらー」
「な、なんで怒るんですか!?」
「自分で考えなさい!」
茹でたたこのように顔を赤くした先輩は早足で行ってしまう。慌てて追いかけたら食堂の手前で待っていてくれた。……うん。やっぱり先輩は優しい。




