知っていることが増えると、知らないことが増える
「それな!」
私のつぶやきに、隣の席の同僚が力強く同意してくれた。
知っていることが増えると、知らないことが増える。ほんとそれ、なのである。無知の知って言うけど、多分そういうこと。知識が増えると、自分の知らない範囲が逆に明確になるのよね……。
「そういうわけで、これがわからないんだけと」
「え、それを言うための前フリだったの?」
同僚が寄越した紙を見る。そこには簡易な設計が書かれている。
「……アプリケーションのサーバー?」
「そう。乗せるのはメッセージ伝達系と、管理ソフトとアベイラビリティと……」
「何がわからないの?」
「ここ」
指された箇所に、サーバーの使用目的が書かれている。
「えっと、アプリケーション(通常系)とアプリケーション(待機系/ファイルサーバー)?」
「ファイル?」
少し考える。待機系…。
「ああ、普段はファイルサーバーだけど、通常系のアプリケーションサーバーが落ちたらアプリケーションサーバーの役割も果たすんじゃない?」
「なるほど。……でもディスク着いてないよ」
「うえ」
本当だ。ファイルシステムとして稼働させるなら、外部にディスクを持たせないとデータをストックしていけない。なんだこれ。
「……聞いてくるか……」
同僚が上司に聞きに行く。しかし同僚が渋る気持ちもわかる。上司の口癖は「自分で考えて」「よしなに何とかして」だから、聞いてもよくわからずじまいになることが多いのだ。自主性を重んじるのだと上司は言うけど、顧客の要望を把握できない状態の開発とかクソだと思うのよ。
「聞いてきた。ファイルのストックはデータベースサーバーでするんだって」
「???? え、じゃあ処理だけをするの? それ、アプリケーションサーバーでは?」
「そう。疑問が増えただけだった」
これはヤバイやつだ。早めに他のメンバーと構成の確認をしておかないと炎上からの爆死するやつ。
「他の担当者は」
「えーと、私と、後輩の子と、あんたと……」
「え???? 私も入ってるの????」
「そうだよ。だから見せたんだよ」
どうも、世の中知らないことだらけみたいだ。




