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夕日に向かって走りたい気分

 放課後の部活を終えて職員室に向かう。昼間はまだまだ暑い日が続いていたけれど、夕暮れ時はずいぶん涼しくて秋なんだなと実感する。

「黒沢先生」

 職員室に着いてすぐ声をかけてきたのは相田先生だった。今度は何だろう。先日セクハラ発言で教頭先生にこってり絞られてからは、大分大人しくなっていたと思うけど。

「何かご用でしょうか」

「はい。えっと……女性の服装について言及するのはセクハラにあたりますか?」

 えー、何をいきなり。

「あ、いきなり何だ? って顔ですね。すみません。ご存じかとは思いますが、先日教頭先生に発言内容がセクハラに該当すると叱られまして。そこで、何がセクハラで何がセクハラではないか、お聞かせ願いたくお声がけしました。正直ですね、僕は今まで他人に対して嫌がらせのつもりで話した事なんてないんです。でも僕の発言が性的に不快だと指摘されてしまった。なので第三者のご意見を教えて頂きたいんですよ」

「はあ、なるほど」

 合点がいった。声をかけてきた理由も、なんのためらいもなくセクハラ発言を繰り返していた理由も。

「まず服装については内容に寄りますけどアウトかと。家族か恋人以外の服装には言及しないのがベターです。まかり間違ってもスカートが良いだのズボンは女性らしくないだの言ってはいけません」

 遠くで近衛先生が突っ伏して肩を振るわせている。

「あと私に毎朝、女性なら料理しろって言いますけど、あれもアウトです。一発退場レッドカードです。生きるために必要な技能に男も女もありませんよ」

「……そう、ですね。どうも僕は情報をアップデートできていないようで」

 相田先生は嘆息しながらも真面目な顔で話を聞いている。……なんでこんな小学校の道徳の授業みたいな話をアラサーのしかも先輩にせねばならんのか。

「後はまあ、女ならこうあるべき、男ならこうあるべき、といった発言もダメです。九回ワンアウトの場面で逆転満塁で併殺くらって試合終了ってくらいダメです」

「すみません、その例えはわからないです」

 そうか。その場面でよく負ける某チームのファンにしかわからないのか……。

 とにもかくにもそうこうして私のセクハラ発言についての講義は長きにわたった。早く帰りたかった。

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