さんまって漢字で書けるかい?
「秋はやっぱりサンマかな」
「いきなり何?」
一限の授業からぶっ通しで寝ていた隣の席の女子が、昼休みになると同時にむくりと起き上がってそんなことを言った。
「サンマ、好きなのよ」
「俺も嫌いじゃないけど。朝から昼間で寝続けて言うことがそれなんだなって思って」
彼女、遠野さんは首をかしげた。
「サンマの夢を見たから」
「サンマの夢」
どういう夢だよ。食いしん坊かよ。心の中で突っ込むも、それを口に出せるほど俺は彼女と仲良くなかった。
「サンマの群泳に混じって海を泳いでいるんだけど、置網に引っかかって釣り上げられちゃうのよ。そして箱詰めされるところで目が覚めたの」
こういうとき、どんな顔をすればいいかわからない。てか、そっち側かよ。なのに感想は食べる側? もうよくわからんな。
「帰りに買っていこうかなあ」
「サンマを?」
「うん。うち両親とも帰りが遅いから、夕ごはんは私とお兄ちゃんが交代で作ってるんだ。今日は私の番」
「なるほど」
思ったより遠野さんはしっかりしていた。……もしかして家事で疲れているから午前中寝ていたんだろうか。
「あ、うちにスダチあるけどいる?」
ふと思い出したので言ってみる。父方の実家が四国で、時期ごとに柑橘が贈られてくるのだけど、秋はスダチが定番だった。
「え! いいの!?」
そんなに? ってくらい遠野さんは目を輝かせている。
「う、うん。有り余ってるし。一応親に確認するけど」
「わー、嬉しい。ありがとう」
母親にメッセージを送ると、すぐに好きなだけ持って行っていいと返事が来た。母は大量のスダチに辟易していたから、減ればなんでもいいのだろう。
「いいって」
「やった! じゃあ帰りに寄るね」
嬉しいな~と遠野さんは鼻歌を歌いながら席を離れた。
……ていうか、あれか。遠野さんが家に来るのか。気付かなかった。女子が遊びに来るとかいつ以来だ? 初めて? でも別に上がるわけじゃないしなあ。母親が浮かれないといいな。




