秋めいてきて候
「秋ですねえ」
「秋だねえ」
なんて、会話を河原のベンチでしている。ただの事実確認であり、特に実りある会話ではない。
「立ち上がるの、面倒だわ」
「ほんとにね」
「なにか、立ち上がりたくなるようなこと言ってくださいよ」
「もう少し座っていて良いんじゃないかな」
横に座る旦那はぼんやりと青い空を見上げて言う。私は足下で揺れるコスモスを眺めて
「まあ、それもそうね」
と返す。
今日は旦那が有休消化のために平日休みで、先程一緒に子供を幼稚園まで送っていった。子供は
「今日はお父さんと来たんだよ!」
と先生にはしゃぎながら報告している。母もおりますよ、と思うものの、いつもいる母親ではスペシャル感がないし、あえて報告するほどの事でもない。
その後、川縁を散歩して今に至るのだけど、なぜだか何にもする気が起きなくなって、このようにだらけていた。
「せっかくあなたが休みだし、いつもと違うことをしたいのですけど」
「もう十分いつもと違うことしてない?」
「そう言われればそうですねえ」
夏より色の薄い空にはいわし雲が泳いでいる。その下の川に何がいるのかは知らない。釣り人がいるから、なにがしかはいるのでしょうけど。
「眠いわねえ」
「帰って寝る?」
「それも良いわねえ」
そこでようやく立ち上がることにする。川から逸れて家の方に向かい、家に着く直前でコンビニに寄る。
「……小豆か……カボチャか……」
「アイス? 両方買えば?」
「両方買っても結局家でどちらにするか悩むでしょう」
「じゃあ俺はモナカにしよう」
「白状だわ」
結局両方買って家に帰る。それから二人でテレビを見ながらアイスを食べる。それは特別ではないけど、いつもと違って、それは特別ではないのかしら? 気がついたらソファで寝ていて、お腹に毛布が掛けられていた。旦那はベッドで熟睡していた。特別って何かしら。きっとお腹にかけられた毛布のことだろう。




