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あ、いわし雲。明日は雨かな。

 ふと空を見上げると、小魚が群泳しているかのような雲が広がっていた。明日の天気は良くなさそうだ。今日の内に収穫を終えた方がいいだろう。

 午前中の内に収穫した野菜を、今度は洗って下ごしらえをする。一人で住んでいるとは言え、食べ物の全てを自給自足で賄っているから、中々の量だ。結局それにも半日取られてしまい、ようやく一息吐いた頃には夕暮れ時が過ぎようとしていた。

 先に風呂を済ませてから食事にする。既に外は暗く、星明かりも見えない。

「こんばんは」

「また来たのか」

「ええ。あなたと話をするまでは何度でも伺います」

 嫌なタイミングだった。彼女は都市部の科学者で、私の魔法を教えて欲しいという。それを技術として誰でも使える物にしたいのだと。しかし、そんなことは私の知ったことではない。

「……天気を気にして欲しいわね」

「天気?」

 彼女が振り返り、空を仰ぐのと同時に雨が降り出した。最初は僅かだった雨粒があっという間に土砂降りになる。

「そんな」

「はー。本当に、どうしようもない。それとも狙ったのかしら」

「そんなことは!」

 仕方が無いので彼女を招き入れ、タオルを貸す。幸い軒下まで入っていた彼女はほとんど濡れていなかった。

「誰かに、ここに来ると告げているかしら」

「いいえ。あなたに何かあるといけませんので」

「気取られたりは?」

「そこまでは……。すみません、わかりません」

 私は魔女だ。私の家族や仲間は、彼女の仲間達の手で処刑された。何の罪もない人々が、魔女であり、魔法を使えるというだけで火に焼べられた。私はそんな最後はまっぴらごめんだ。だから、こうして森の奥深くに引きこもっている。

 だと言うのに、こうして彼女はずけずけと入ってくる。人間の、そういうデリカシーのなさが、たまらなく不愉快だった。

「明日の朝には出て行ってちょうだい」

「はい。あの、それまでは」

「嫌よ。あなたと話すことなどありません。私は火に焼べられたくないの」

 いつもの通り、彼女はそれで黙り込む。しかしいつもと違うのは私と彼女の間に扉が無いことだ。さて、彼女は。出方をうかがう。

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