走ってみる。ただ暑いのも癪だから
「あづい」
「なー。このクソ暑いのに短距離走とか……」
灼熱の校庭で、グチグチ不満を垂れ流す高校生男子。俺らのことだ。九月に入って二学期が始まったけれど、だからと言って夏が唐突に終わるわけではない。むしろ絶好調で続いている。だというのに教師陣は既に秋気分で、
「体育祭の種目決めのためのタイム計るぞ。50m、100m、200mをそれぞれペアで記録するように」
だそうだ。頭おかしい。このクソ暑いのに、日陰の一つもない校庭で全力ダッシュとか。でもよくよく考えると、体育祭本番も毎年、結構灼熱だった気がする。秋晴れ的な。練習は台風で潰れがちなのに、何故か本番はいつも真っ青な晴天のイメージだ。
「えーっと……あと200mだけだな」
「よっしゃ、ささっと終わらせよ」
ペアの友達と二人で如何に素早く終えるか頭を捻って、人気のないものから進めたので、授業時間は大分あまりそうだ。そうなったら日陰で休もう。
無事に200mも計測を終えて、木陰でタイムを確認する。
「うーん。なぜか100mが一番良い気がする」
「俺は50mかな。100mと200mはだれる」
二人であれこれ言い合っていると、同じ事をしていた女子もやってきた。
「おつかれー暑いねー」
「おー、おつかれー」
暑い暑いと体操着をパタパタ仰ぐ女子二人。ちらりと隣の友人を見ると、同じような顔でこちらを見ていた。わかる。わかるぞ友よ。裾を仰いでいる方はめっちゃヘソ見えてるし、首元を仰いでいる方はもう少しでブラが見えそうだ。いいぞ、もっとやれ。
しかし、そう都合良く見たいものが見えるわけもなく、女子達は仰ぐのを止めてタイムを確認し始めた。
「ぐぬぬ」
だが、諦めるのは早かった。汗だくの体操着が肌に張り付き、ブラの背中側が浮いている。前は……見えなさそうだ。しかしこれはこれで。
「どう思う? 友よ」
「何がだよ」
「頑張ればもう少し見えないかな」
「いやー。今は難しいだろ」
そして女子達は教師に呼ばれて去って行った。当然俺らも呼ばれているので後を追う。体育祭が楽しみになってきた。




