新学期、あの子に会える
「おはよー」
できるだけ何でもない風を装って、新学期の教室に入った。半数くらい来ていたクラスメイトを確認する。あの子はまだ来ていない。
ちょっとがっかりしながらも自席に向かう。今日であの子の隣の席もおしまい。だから、少しでも長くいたかった……だなんて女々しいだろうか。でもそれを言うならさっさと告白もできず、連絡先の交換すらできないまま夏休みを迎えてしまった事の方が余程女々しかった。
「おはよう」
「お、おはよう!!」
「驚きすぎ。相変わらず早いんだね」
薄ぼんやりとあの子のことを考えていたら、突然本人に声をかけられてびっくりした。夏休み明けの彼女は他のクラスメイトと同じように、小麦色に焼けている。でも彼女の元気な笑顔にとてもよく似合っている。
「……早く」
「うん?」
頑張れ、頑張るんだ。ここで言わないと、きっと一生言えない。
「早く、遠野さんに会いたかったから」
「え……そうなの? 言ってくれればもっと早く来たのに」
「連絡先知らないし」
「そうだっけ。知ってると思ってた。じゃあ交換しようか」
マジか。言ってみるもんだなあ。やればできるのだと、もう少し頑張れるのだと、心が蹴飛ばされるようだ。
「その、今日で遠野さんの隣の席が最後だからさ。だから、早く会いたかった」
「……生田くん、なんか、あれだね。今日はぐいぐい来るね。照れるなあ」
「遠野さんが来るまで、自分の女々しさにうんざりしてたから。頑張ろうかと」
そう答えると遠野さんは笑った。
「じゃあ、私も頑張っちゃおうかな? ねえ、今日の放課後は暇?」
それは、どういう意味だ?
「特に予定はないけど」
「じゃあ駅前でお昼ごはん、一緒に食べよう」
「行く!」
被せ気味でそう答えると、遠野さんの笑顔がもう、にっこにこになった。ああ、可愛いな。この笑顔が好きだと思ったんだ。
「うん、じゃあ約束ね」
そう言われたときに始業のチャイムが鳴り、担任が入ってくる。うん。二学期は青春できそう。期待に胸を膨らませた。




