台風ニ備エヨ
「えー、今から?」
「だって週末には台風来るもの。さっさと行ってきて」
母に命令されて買い物に出る。用件は台風シーズンに向けて備蓄の買い出し。私が学校に行っている間に、緊急用品の見直しをしたら、電池やカップ麺なんかがかなり減っていたから追加してきて欲しいのだそうだ。まあ、両方消費したの私なんですけど!
仕方が無いので制服から着替えて自転車で飛び出す。近くのスーパーで良いだろうか。特に指定はなかったから、気にせず近いところに行くことにする。
スーパーで母から渡された買い物メモを見ると、電池とカップ麺以外にもピーマンとかキュウリとか書いてあった。体の良い買い出しだったらしい。しかしおつりでジュースやおかしを買っても良いと書いてあるので、頑張ろう。
「えっと……きゅうり……あった。大葉? 大葉って……あ、あった」
普段買い物をしないものだから、なにがどこにあるかちっともわからない。首をかしげながら、必要以上にうろうろしてしまう。
「あれ、高木さん?」
「わ、山田先輩!」
名前を呼ばれて振り向くと、憧れの先輩が立っていた。何故こんなところに。すごい偶然だ。
「お使い?」
「はい。母に頼まれて。先輩もですか?」
「うち今、母親が留守でさ。代わりに俺と弟らで食事用意してるんだよ」
「え、すごい」
聞くと先輩のお母さんが、おじいちゃんの介護で留守にしがちで、その分の家事を他の家族全員で分担しているそうだ。すごい。でも、すごいと感心する一方で、自分が食べたカップ麺の補充すら渋る自分が恥ずかしくもなる。
「そんな大した物は作れないけどさ。でも週末台風だし、買い溜めしなきゃと思って」
「母もそう言ってました」
それからなんとなくの成り行きで先輩と一緒にスーパーを回ることになった。すごい、夫婦みたいだ。しかも先輩は何がどこに売っているかちゃんと解っている。すごいと思う反面、やっぱり自分がなさけない。うん。帰ったら必要最低限の家事くらい教わろう。




