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ツクツクボウシ、サヨウナラ

 部活動の指導を終えて職員室に戻る。夏の夜は生暖かくて、しかし風がもう涼しい。職員室は窓が開けられていて、そんな緩やかな風が静かに流れ込んでいた。

「黒沢先生」

 呼ばれて顔を上げると、一つ後輩の近衛先生が隣に立っていた。そして空いていた隣の椅子に座り、体を寄せてくる。近衛先生は可愛らしい外見にふわふわした良い匂いの女性で、男子生徒からも人気がある。

「どうしたんですか」

「聞きました? 相田先生のこと」

「?」

 きょとんとする私に、近衛先生が苦笑しながら教えてくれた。

「実は大分教頭先生に絞られたようで」

 なるほど。察した。近衛先生曰く、ここ数日、教頭先生宛に女生徒から相田先生の発言がセクハラでは? という申し出が複数あった。それについて教頭先生が対応を検討しようとしたら、なんと男子生徒からも不満の声が上がった。これはいけない、ということで、早急に処置が取られたらしい。

「絞られた、というか……絞られている……なんですけど」

「え、現在進行形ですか」

「Yes,hi is berry ……怒られている……」

「何故そんな中途半端な英語……???」

 そして近衛先生も相田先生の被害に遭っていたと教えてくれた。どうも服装についてあれこれ言われていたらしい。

「たまにパンツスタイルだと絡んでくるんですよ。ウザすぎです」

「ええ。別に何着てたっていいじゃないですか」

「ね!!! 女性たるものスカートであるべし、なのだそうです」

 それはウザい。私の被害を近衛先生に話すと、彼女は般若のような顔になった。こわい。

「有り得ないです。それ教頭先生に言いました?」

「もちろんです。教頭先生が鬼神みたいな顔で聞いて下さいましたよ」

 そう答えると近衛先生が大笑いする。そして自分が報告したときもそういう顔だったと言った。

「まあ、教頭先生にお任せすれば大丈夫です。よしなに絞ってくれます」

「間違いない」

「じゃあ、ビアガーデン行きましょう」

「じゃあって? 接続がおかしくないですか?」

 しかし彼女は満面の笑みで笑った。

「そろそろ今年のシーズンも終わりですから。締めに行かないと」

「まあ……行きますかね!!」

 荷物を片付けて職員室を出る。結局教頭先生と相田先生は学校を出るまで見かけなかった。

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