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冷夏っていって、結局酷暑

 朝起きてカーテンを開けたら、昨日と同じように太陽がギラついていた。今年の夏は冷夏の予想です。なーんて言っていた天気予報は、未だに毎日『今年一番の暑さです』と言い続けている。

 着替えて牛乳だけ飲んで家を出る。職場の学校に着いたらまた着替えて、買ってきた朝ごはんを食べて部活の朝練と午前中の授業の準備をする。

「あれー、黒沢先生、また買ってきた朝ごはんですか?」

 そう絡んでくるのは一つ先輩の相田先生。これも毎朝のことで、いつもはウザいので愛想笑いをしていたけど、今日は暑さでうんざりしていたので真顔で彼の方を向く。

「何か問題が?」

「えっ、いえ、その。毎朝買ってると経済的じゃないなって」

「作るために睡眠時間を削る方が不経済なので」

「でも、女性なら、ねえ」

 うっざ。この令和の時代にまだそんなこと言うとか……。

「ええ、相田先生、この令和の時代に何、昭和のおじいちゃんみたいな事言ってるんですか」

 うっかり心の声をそのまま言うと彼は顔を赤くする。

「昭和生まれのうちの父だって自分の朝ごはんくらい自分で用意してますよ? ていうか自分が生きるために必要な家事に男も女もないですよ。それ、生徒に言わないで下さいね。完全にセクハラですから」

 と、ここまで言ったところで教頭先生が来た。相田先生は挨拶に行くと見せかけて素早く立ち去る。教頭先生は問題を起こされるのが大嫌いでセクハラとかパワハラとかに厳しい。だから彼に先程の発言を聞かれたらめちゃくちゃ怒られるし、最悪始末書を書かされるまである。

「あ、黒沢先生。いいですか」

「はいー」

 教頭先生に呼ばれて席を立つ。相田先生が怯えた顔でこちらを見ているのが笑えた。そんなに怯えるくらいなら最初から言わなきゃ良いのに。教頭先生の要件は当然だけどまったく別件だ。暑いから部活動の指導中に生徒の様子に気をつけろ、必要であれば部費で塩タブレットを用意するように。という至ってまともな内容だ。

「承知しました。気をつけます」

「あ、あと」

「?」

「セクハラに該当する発言があれば早急に報告をお願いします。あなた意外からも報告は上がっていますので」

「はい。承知致しました」

 後ろで相田先生が顔を青くしているのが、見なくても察せて思わず笑ってしまった。

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