線香花火は最後に終わらせよう。寂しくなるから。
パチパチ、シューシュー。手持ち花火が足下を照らす。隣には同級生の友人。反対の隣には好きな先輩。いつも通り押しに押して確保した隣のポジションだけど、うまく話せないでいる。友人は、私から見て正面にいる先輩と穏やかに話していた。
友人がうらやましいと思うことがたまにある。彼女と先輩は相思相愛で、彼女が素直になればいつだって付き合うことができるのだ。私とは違って。私の好きな先輩は、私のことが怖いという。否定は出来ない。背も高いし、気も強い。かわいげなんてどこにもない。
「おい、花火消えてるぞ」
「あ、ほんとだ」
ぼんやりと薄暗い考えにふけっていたら、花火は消えていた。慌ててバケツに放り込んで次を選ぼうとする。と、隣から花火が差し出された。
「これ、出し過ぎたからやるよ」
「ありがとうございます」
先輩から私に話しかけてくるだなんて珍しい。調子が悪いのだろうか? なんて思ってしまうくらいに、私は先輩から相手にされていない。まあ、しょうがないんだけど。先輩にだって選ぶ権利はあるのだ。
「ほら、花火こっち向けろ」
「はい」
先に火を付けていた先輩の花火に、私の物を近づける。すぐに火が付いて、シューシューと光が散る。
……あーあー。私も先輩に火、付けられちゃったなあ。そう思うけど、そこから先が続かない。私の火も、花火くらい簡単に散ってしまえば楽なのに。もうちょっと、相手をしてくれそうな人を好きになれれば良かったのに。
「なんか、お前が静かだと気持ち悪いな」
「そうですか」
「調子狂う」
やめてよ。そういう、気を持たせるようなこと言うの。私は先輩の方を見ないようにする。見たら多分泣く。
「来週、妹の誕生日なんだよ」
なんですか、いきなり。こちらが答える前に先輩は続ける。
「親からケーキ買って来いって言われて金渡されたけど、何買えば良いかわからんから付き合ってくれ」
「え」
「……ついでに、お前の誕生日プレゼントも考えるから」
「よ、喜んで!」
「居酒屋かよ」
そう笑う先輩に、やっぱり火は消せないと思ってしまった。




