白球を追いかけて何を思う
暑い夏の最中。といってももうお盆は過ぎているから残暑と呼ばれる暑さの中。大学のゼミに向かうべく家を出て駅に向かう途中の中学校で、野球部の子たちが練習をしているのを見かけた。
「暑い中頑張るなあ」
走って球をキャッチして、それを投げて。今まで特に部活動というモノをしてこなかったから、彼らが輝いているのがうらやましい。じゃあ自分も何かやりたいか、と言われたら答えは否だけど。
「お」
スマホが震えてメッセージの着信を告げる。送信者名を見て、一人でにやついてしまった。送ってきたのはゼミの後輩で、内容は昼ごはんの誘い。もちろん行く。喜んでいくし、全力で走っていく……と言いたいけど、時間にはまだ余裕があるから引き続き歩いて行く。
きっと白球を追いかける少年達も、今の僕と同じような気持ちで走るのだろう。手に入れたい何かがあるから足を動かすのだ。
僕の大好きな後輩が何を考えているか。わかるときもあれば、ちっともわからないときもある。でも少なくとも今はわかる。
「先輩!」
大学の最寄り駅について改札から出ると彼女が笑顔で手を振っている。こちらも笑顔で手を振る。
「お待たせ」
「私も今来たところですので、お気になさらず。行きましょう」
並んで歩きながら彼女は何を食べようか熱心に話していた。事前に聞いたところによると、カップル限定で頼めるフェアの限定デザートがあるから一緒に来て欲しいとのことだった。
「さっきサイトで見たけど、少し大きいみたいだね」
「そうなんですよ! 二人で仲良く突きあって下さい……みたいな。あ、でも私一人で食べられるので大丈夫です!」
「僕も甘いの嫌いじゃないから、少し分けて」
「もちろんです」
そう言って笑う彼女がかわいくて、いつか自分だけに向けられたらな、と思う。その思いは小学生の頃からかわらない。
「カップル限定とのことだけど……どうする? 手、つなぐ?」
「え、えっと……」
精一杯の勇気を出すと、後輩は顔を赤くして悩み始める。僕は彼女の手を取って歩き出した。




