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「ゲリラ豪雨」より「夕立」が好き

「あら、雨ね」

 妻が窓から外を見て言う。

「最近はゲリラ豪雨なんて呼び方をするらしいよ」

 僕が答える。すると妻はつまらなさそうな顔になった。

「やあねえ。ゲリラ豪雨なんて呼び方、情緒がない」

「確かに」

「夕立の方が、ずっと素敵じゃない。驟雨も好きですけど、認知度が低くてダメね」

 そう言って妻は窓を開けた。緩やかな夏の風と、ほのかな雨の匂いが部屋の中に入ってくる。ベランダが広いからか、雨はほとんど入ってこない。

 しかし、まだ夕方だというのに外は暗い。雲は黒く、時折遠くで稲妻が光っている。

「何か起こりそうね」

「何か?」

「ええ、わくわくしない?」

「しないなあ」

 まあ、仕方ないわね。これは選ばれし血族にしか解らない勘なのよ。と、妻はニヤッと笑って言った。妻は時々そういう風になる。本人は中二病が完治していないからだと言っていた。見たことはないけど、きっと右手がうずいたり、封印されていたもう一人の彼女が出てきたりするのだろう。当然僕も経験済みだ。だから僕らは仲良くやれている、とも言える。

「雨の匂いって素敵だと思わない?」

「悪くない」

「もう少しで止むみたいね。虹は見えるかしら」

 スマホの天気予報のアプリを見ながら、妻は遠くを見た。彼女は虹を見るのが好きだ。子供が小さいときは、良く子供と公園の噴水で虹を探していた。僕は虹の見方なんて知らなくて、妻に教えられて初めて知った。それからは、時折僕も探してしまう。

「上がったわね。……うーん、けど虹は難しいかしら。いえ、反対側だわ」

 そう言って隣の部屋に言ってしまった。のんびり着いて行くと妻が手で丸を作っている。

「見えた?」

「ばっちりよ」

 彼女が指さす方向を見ると、確かにうっすらではあるけど虹が出ていた。大きさはなかなかで、噴水に見えるものとは迫力が違う。

「きれいねえ。ところで何故虹は一番下が紫なのかしら。空が青いのと関係ある?」

「難題だなあ」

 彼女はさっそく手元のスマホで調べている。そうやって蓄えられた彼女の知識を教えてもらうのが楽しいから、きっとずっと一緒にいるのだろう。

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