種なしスイカなんてつまらない
仕事帰りにスーパーで夕ごはんを買って、ついでにデザートとしてカットスイカも買ってきた。角切りになったスイカがプラスチックカップにいくつか入っているのだ。手も汚れないし、包丁とまな板もいらない。なんて便利。
帰宅してシャワーを浴びてから買ってきたお弁当を食べる。肉系のがっつり弁当だったから、かなりお腹いっぱいだ。そしてスイカである。
「スイカ、久しぶりだなあ」
一口サイズのスイカは軽くてあっさりさっぱり、いくつでも食べられそうな気がする。それを半分くらい食べたところで、ふと違和感を覚えた。
「んんん? 何か……物足りない?」
少し考えて違和感の正体に気付く。そうだ。種がないんだ。
「なるほど、食べやすい」
でも少し、物足りない。勢いに欠けるアクション映画みたいな、お化けがあまり怖くないホラー映画みたいな。まあこれはスイカだから、そこまでがっかりするものでもないのだけれど。
「……次の休みは、種入りのスイカ買ってきてかぶりつこうかな」
1/4サイズくらいならば土日をかければ食べ終えるかもしれない。そこで思い出した。土曜日に後輩女子が家に秋刀魚とすだちを持ってやってくる約束だった。じゃあ迎えに行くときに買って、食後のデザートにしよう。あいつはスイカは好きだろうか。
「しかしなあ」
彼女のことを好きか嫌いかで言えば好きだ。可愛い後輩だと思う。あれが時々、肉食獣の様な目でこちらを見ているのは知っている。俺のことをそれなりに気に入ってくれていることも。しかし、後輩だと思っている期間が長すぎて、どうにもピンと来ない。彼女と付き合えるのか? どうなのか? もちろん向こうの気持ちしだいなわけだが。
「自分から聞くのも変だし……」
とりあえず、聞いてもおかしくないことから聞いていこうか。
『スイカは好きか?』
よし、とりあえずこれだ。徐々に掘り下げていこう。我ながら回りくどいやり方だが、恋愛馴れしていないおっさんなど、そんなもんだろう。




