祖先と戦前、面影に立つ
「あれ、久しぶり」
「姉ちゃん来てたんだ」
「お盆なので」
お盆にお墓参りに行ったら弟に遭遇した。事前に行くことを伝えていたわけではないし、聞いてもいなかったから、本当に偶然だ。
「母さんたちは?」
「さあ」
両親と子供二人はそれぞれ離れて暮らしているから、各自がどうしているかを全く知らない。まあ、一緒に住んでいてもそんなに知らなかったけど。
「彼女とかいるの」
「いないねえ。最近転職したから、そっちが忙しいし」
「お疲れ様です」
弟は最初に就職した会社がクソブラックで、その後もブラックだったりグレーな会社を転々としている。早くホワイトなところに落ち着けると良いね……。
「姉ちゃんは?」
「相変わらず。ぼちぼち働いて好きに生きてる」
「彼氏と結婚は?」
「どうかなあ。どちらかが言い出さないと動かないよね。そういう話」
彼氏とは仲良くやっている。でも一緒に住んでないし、互いに仕事もあって週に一度会うか会わないか、くらいだからうまくやれている気もする。生活を共にするとなると、話は違ってくるだろう。
「このお墓、誰が入ってるんだっけ」
唐突な弟の質問に、少し考えてしまう。
「えーっと……母方のじいちゃんと、じいちゃんの弟。あとその両親と……他はわからないな」
母方の祖父は弟が産まれる前、私が産まれてちょっとして亡くなっている。だから弟はもちろん、私も覚えてはいない。
「じいちゃんって戦争とか行ったのかな」
「行ってないと思うよ。時代が合わないし、じいちゃんは体の弱い人だったって言うし」
「今朝テレビで、戦争の記憶を絶やさないようにって言ってたから」
そういう時期だからね。でもきっとそれは難しいのだろう。だって戦争未経験の人がほとんどだ。まあだからと言って、戦争したことがないからしてみようとなるわけもなく、しない方が良いことくらい解るけど。
「それを、解らない人がしたがるんだろうね」
「そりゃそうだ」
それからぽつぽつと互いの近況を話して別れた。過去と現在が交わるのがお盆なら、大正解だったのだろう。




