グッバイ、汗だく満員電車
「電車が空いていた」
「今日からお盆だからでしょうか」
「ああ、そんな時期か」
そう言って先輩はカレンダーを見る。社内も人が少なくてエアコンがいつもより効いている気がした。
「帰省とかしないの」
「実家めっちゃ近いので帰省もなにもないんですよね」
「あー」
「先輩は帰省されないんですか」
「この時期は高いし地元は台風が多い時期で飛行機が止まりがちだから行かない」
なるほど。聞けば先輩は九州の出だそうで、七月から九月にかけては台風が多いから外しているそうだ。ここは関東で、私はずっと関東住まいだから、九州の天気を気にしたことがなかった。でも言われてみればそうだ。
「ロケーションギャップですねえ」
「?」
「私……というかこの辺りは、基本的に台風来ないので気にしたことがありませんでした。台風で学校休みとか期待させないで欲しい……」
「そう言えばそうだな」
先輩にとっては夏は台風の時期だそうで、こちらに来てからは台風どころか雨も少なくて、同じ日本でも違うものだと驚いたそうだ。最近は梅雨でも晴れていることが多いし、ずっと雨が降り続く……みたいな感じではないなあ。
「あ、先輩。お好み焼き食べたいです」
「なんだいきなり」
「帰りに食べに行きましょう」
「いいけど……今まだ九時過ぎ……」
「昼ごはんは先輩の食べたいもので良いですから」
「なんで一緒に行くこと確定なんだ???」
なんて言いつつも、先輩が私の好きなお店に連れて行ってくれることはわかっている。そういうとこ。好き。しょうもない私のワガママに付き合ってくれるとことか、面倒見の良いとことか。好き。
「盆ていつまでだっけ」
「今週いっぱいでしょうか。知りませんけど」
「知らんのか。でもまあそんなもんだよなあ。じゃあ電車が空いてるのも今週いっぱいか……」
「九月くらいまでは多少マシでは? 学生がいませんし」
「まあねえ」
満員電車もねー、先輩と乗って「きゃっくっついちゃった」とかなら良いんですけど。そんなことないし。密着してるの知らないおっさんだし。
「昼飯は担々麺にしよう」
「良いと思います」
こういう、脈絡もなく気負いもせずダラダラ話せるから、やっぱり先輩が好き。




