盆
「盆だ」
「ぼん?」
「そういう時期だねって」
「ああ、もうそんな時期か」
職場にてふと目を向けたカレンダーで思い出した。お盆の時期だ。
「よし、帰りにおはぎを買って帰ろう」
「他になんかないの」
「ないねえ」
実家とは疎遠だし、そもそも祖父母が地元から離れているから、先祖代々のお墓……とかないし、母方が祖父母の代からクリスチャンで、父方にもそういう風習がなかったから、お盆というイベント……って言うとあれだけど、ともかくそういう行事をしたことがない。
「お盆、したことないんだけど、何するものなの?」
「え、ないの!? ……って驚いてみたけど、俺もねえわ」
「ねえ……なにするんだろうねえ」
同僚男子と二人で首をかしげる。ちなみに同僚男子の方は母親を早くに亡くしていて、父親が季節ごとの行事に疎い人だったからやってなかったらしい。男親だけだったらねえ……仕方ないよねえ……。
しかし日本人として、お盆が何をするものかも知らないのはいかがなものか。と言うことでグー○ル先生に聞いてみよう。
「えーっと……ご先祖様が帰ってくるから、それをもてなす? のかな?」
「この精霊馬は知ってるな。あ、馬と牛、両方を表わすんだ????」
「へえ……」
「へえ……」
と言うわけでお盆について知識を得たものの、関心は低い。ご先祖様と言われても、そういうものを気にするような育ちでは無かった。
「……なあ」
「うん」
「うちに、お盆しに来る?」
「なんで?」
「上手いこと言おうとして失敗したプロポーズ的な……」
「下手くそすぎる」
だよなあ、と同僚男子は苦笑いする。でもまあ、そういうものは、まずはお友達からと相場が決まっている。
「ではまず、一緒におはぎを食べませんか」
「お、おう?」
「お友達から……的な……」
「友達ですらなかったのか」
「ただの同僚だから」
しょげた顔をする同僚男子。おはぎを食べて、連絡先を交換しよう。話はそれからだ。




