ジャケットは暑い
客先での打ち合わせを終えて帰社して、自席の椅子にジャケットを投げ捨てる。いくら薄手の麻素材とは言え暑いものは暑いのだ。ていうかなんでこのご時世に、ちょーっと客先に打ち合わせに行くだけでジャケットを羽織る必要があるのか。馬鹿じゃないか。男性陣はノージャケット、ノーネクタイなのになんで私だけ!?
「お疲れー」
隣の席の冴えない先輩に声をかけられる。
「もー! めっちゃ暑かったです!!!」
「だろうな。ほら」
そう言って差し出されるのは冷たいミルクティーの缶。もー! そういうとこ好き!!! 見た目全然冴えないし、仕事も派手なことはしないけど、真面目にコツコツ、堅実に進めるタイプだ。好き!!!!
「ありがとうございます! 頂戴します!」
現金な私はあっという間にご機嫌になって、もらったミルクティーを一気飲みする。ミルクティーなもの私がコーヒーを苦手なのを知っているからだ。そういうとこだよ!!
「打ち合わせどうだった?」
「リーダーがクソでした」
「どっちの?」
「もちろん弊社のです」
そこから打ち合わせの報告と見せかけて怒濤の愚痴が始まる。先輩は半笑いで一通り聞いてくれた。
「ふーん。だいたいわかった。お疲れ」
「え、わかったんですか。エスパーの方ですか?」
「アホか」
しかし先輩に愚痴って話が整理された。私が議事録係なので、先程の内容をそれらしくまとめて部内に送る。件のクソみたいなリーダーからクソみたいな指摘があった以外は問題なし。指摘も他の先輩がこき下ろしていたから、放っておく。
「さすがだねえ」
「何がですか」
「あの怒濤の愚痴をよくもまあ、こんなに綺麗な言葉でまとめたもんだ」
それ、褒めてないし。大人だしお賃金もらってるから、それっぽく書き換えただけだ。
「先輩ー、昼ごはんは担々麺行きましょう」
「……さっき汗だくで帰ってきたのに。元気だな」
「若いので。さあ行きましょう」
なんだかんだ先輩は付き合ってくれる。あーもう、好き!




