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四年の眠りから覚めて

「うるさいなあ」

 窓の外は灼熱で、セミの音がそれを強調させる。何が言いたいかって言うと、出かけたくない。でもそろそろ家を出ないと塾の夏期講習に間に合わない。行かなくては。……部屋を片付けてからでいいかな。仮眠を取ってからでいいかな。

「いやいや、それ絶対遅刻するやつだし」

 なんとか鞄にノートや教科書を詰めて家を出る。両親は仕事だし、妹も高校受験に向けて塾に行っているので、家には誰もいない。一応小さく「いってきます」と呟いてから鍵を閉めた。

 予想通り外は灼熱の地獄のようで、街路樹にはセミが鈴なりになって騒いでいる。この一夏を楽しむために、彼らは四年間も土の中で寝ていたのだ。その嬉しさを今奏でているのだろう。知らんけど。うるさいから、そうやって現実逃避をしていないとやっていられないのだ。

 塾までは電車に乗っていく。電車の中は多少涼しくて、吹き出した汗を拭かなくてはいけない。テキストをぱらぱらめくっている内に目的地に着く。電車から降りたら、またとんでもなく暑い。

「さっきより暑くないか?」

 そうぼやくも、塾は駅のすぐ近くなので、急いで建物に入って涼む。

「おはよー」

 朝じゃ無いけどここではいつもそう挨拶される。慣例みたいなものなのだろう。自分も何も考えずに同じように返す。

 ふと顔を上げるとポスターが貼ってあった。

『三年間の努力が実を結ぶとき』

 と書いてあった。セミより短いな、と思う。だからきっと結果がどうであっても、

あそこまで嘆くことはあるまい、とも。

 自習室に顔を出すと、やはり知り合いがいて隣に座って少し雑談をする。でも互いにそんなに余裕なわけではないから、すぐに勉強を始める。

 来年の夏、自分はどうしているだろうか。あの子と、並んで笑えているだろうか。そのために、頑張っているはずなのだ。

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