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熱帯気分

「暑いですわ暑いですわ」

「姫様、せめて起き上がられてください」

「無理ですわ」

「しかし、そのようなあられもない姿では民衆に示しがつきません」

 知ったことか、ですわ。むしろ王族が先んじてだらけることで、国民もだらけやすくなりません? だめ?

「では、なにか涼める物を持ってらして」

「……検討致します」

 小うるさい従僕を下げさせて、一人で存分にだらけることにする。本当は服も脱ぎたい。しかしさすがに、従僕とはいえ異性がいたら恥ずかしい。

「王子の国はどうなのでしょうか」

 私が嫁ぐことになっている隣国。あちらの気候はいかがかしら。こちらほど蒸し暑くはない? それとも海が近い分、もっと湿気ているのかしら。今度その旨を手紙で聞いてみよう。

 ずっとお慕い申していたから、政略結婚とはいえ彼に嫁げるのはすごく嬉しい。婚約のご挨拶の時は、うっかり素が出てしまったというか、ちょっと言い過ぎてしまったかもしれないけれど、それを彼は嫌った風ではなく、むしろまっすぐ私を見て下さるようになったから良かったのでしょう。

「彼が……お慕いしていた女性は、どのような方かしら」

 王子に、他に意中の方がいるのはすぐにわかった。それが叶わぬ恋なのだとも。王族とはそう言う物だ。後に彼が手紙に書いて寄越したことによると

「多かれ少なかれ上に立つものは人ではなくなる」

 彼の父の言葉だそうだ。つまり、嫁いだ先で私の義父になられるお方だ。どのような方だろう。

 そも、私の住まう国は女王国だ。女性が圧倒的に強い。だから男性が支配する国がどのようなものか、見当もつかない。

「まあ、どうとでもなるでしょう」

 だって、あの王子の国だもの。国際的な付き合いも良いし、他国から悪い噂も聞かない。王子と共にこちらに訪れる人たちも身なりがきちんとしているし、対応も穏やかだ。そうであればきっと大丈夫。

「姫様、氷菓子をお持ちしました。あと魔女殿がおいでです」

「ありがとう。今行くわ」

 どうにか起き上がってドアを開ける。笑顔の魔女様と顔をしかめた従僕が並んでいた。彼らの顔を見られるのはあと少しだ。

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