君が好きだったアイス
最近のお師匠様は何かをじっと考え込んでおられる。それは、お師匠様が使える女王陛下の末のお姫様が隣国に嫁がれてからずっとのことだ。
以前であればこの時期は暑いからと寝っ転がって、魔法で冷たくした空気を浴びたり、僕とベランダでアイスを食べたり、そういう余暇というか心の余裕みたいなものがあったのだ。けど、今はベランダから街を見渡したり、ベッドに寝転んで天井を見つめたり……何かを見つめて考え込んでばかりなのだ。
「お師様、アイス食べませんか」
「いらない。お前がお食べ」
「僕もいらないです。お師様と食べないとおいしくないので」
「……どこでそんな台詞覚えたのよ」
久しぶりにお師匠様がこちらを見て僅かに微笑んでくれた。
「ねえ、お師様。何を考えておいでですか。姫様のことですか」
そう問いかけると、お師匠様はまた遠くを見る。その先には城下町が広がっている。
「いや、あれはきっと幸せにやっている。それは心配していない」
「じゃあ」
お師匠様は何を考えているのか。弟子であるはずの僕にはちっともわからない。僕が知っているのはお師匠様がイチゴのアイスが好きなことくらいなのだ。
「そうだねえ。あれが嫁いで行った国と我が国の違い、かな。私が隣国から雨を奪っていたのは知っているね」
「はい。それがマナー違反なのも。でもそうしなければ、僕たちの国は干からびてしまう。だから仕方なく……」
しかしお師匠様は悲しい顔で首を横に振った。
「いや。それは正確ではない。確かにこの国は雨が降らない。けど山に囲まれているから上から降らずとも下から汲むことはできたんだ」
「?」
「わからないなら、その方がいい。でも考えなくては。私も陛下も、安易な方向に流れて他国に迷惑をかけてしまったんだ。きちんと考えれば、怠けることなく手を動かせば、そんなことは必要なかったのに。だから私は考えているんだよ。これ以上、自分を見損なわないためにね」
……やっぱりお師匠様の言うことは難しい。でも、そういうお師匠様を僕は尊敬しているので、ずっとここにいる。
「お師様。とりあえずアイス食べましょう。熱くなると頭、回らないですよ」




