セミって七日の命らしいね
母にお使いを頼まれて家を出る。夏の日差しは容赦が無くて、その上街路樹にはセミが鈴なりで、まさにしゃんしゃんとわめき立てている。
「あれ、すずちゃん?」
「おはよう、りんちゃん」
暑さにうつむいて歩いていると、やはり鈴のような声で呼ばれた。聞き慣れた、でも何度聞いても幸せになるその声は、クラスメイトのものだ。夏休みに入ってからはなかなか会えなくて、久しぶりに見た顔は、夏だというのにあまり日に焼けていなくて白いままだった。
「どこか行くの?」
「母さんにお使いを頼まれたの。そこのスーパーまで」
「一緒に行ってもいい?」
「いいけど、そんな大した物買わないよ」
「いいよ。すずちゃんと一緒に行きたいの」
そう微笑むりんちゃんと並んで歩き出す。夏休みに入ってからあったことをポツポツと報告し合う。りんちゃんは明後日からお父さんの実家に遊びに行くそうだ。私は既に母の実家に遊びに行ったからそのことを報告する。
「そう言えばお土産買ってきたよ。後で渡しに行って良いかな」
「もちろん。じゃあ私も帰ってきたらお土産渡しに行くね」
そんな話をしているうちにスーパーに着いた。頼まれた買い物を済ませて、また炎天下を歩く。
「セミ、すごいね」
「そうだね。でもセミって七日で死んじゃうんでしょ。だから必死なんだね」
「りんちゃん……それ、嘘だよ」
「え!?」
目を丸くするりんちゃんに、セミは実際は一ヶ月くらい生きる話をする。りんちゃんは最初はびっくりしていたけど、途中から笑い出した。
「そうなんだ。じゃあそこまで儚い命ってわけじゃないんだ」
「うん。だから、鳴いているのもただ元気なだけだよ」
そうして歩いているうちに分かれ道まで来た。
「じゃあ、りんちゃん、あとでお土産持って行くね」
「……えっと、その。迷惑じゃなかったら着いて行っても……いいかな」
「……いい、けど」
りんちゃんは何故か少し照れたようにもじもじしている。
「もうちょっと、すずちゃんと一緒にいたいの。久しぶりだから」
そう言われたら断るわけには行かない。
「一緒に行こう」
手を出すと、その手をそっと包むように握られる。心が満ちるような気持ちになった。




