白紙の絵日記、まだ大丈夫
「うーん、終わるかなあ」
朝ごはんを終えた後のリビングで中学生の妹、花音が呟いていた。
「何してんだ」
「あ、お兄ちゃん。いいところに。夏休みの宿題ね、これと、これ。よろしく」
「はあ?」
妹に手渡されたのは英語と国語、数学、社会に理科のワーク……って全部じゃねえか!
「あほか! 自分でやれ! 何のための宿題だよ!」
「そういう御託は結構です。いいですか和泉くん。わたし、受験生だよ? 宿題とかやってる場合じゃないよ?」
「俺も受験生だっての。だいたいこのワークの中身はそのまんま高校受験の試験範囲じゃねえか。これやらんで、お前は何をする気だよ!」
そう言うと妹はそっぽを向いて
「……ちゅ、中学生活最後のアバンチュールを楽しむ……?」
と小さい声で言う。重ねてアホか。どうしようもない妹だ。ただサボりたいだけじゃねえか。
「そもそも俺はこれから塾だっての。自分の勉強は自分でやる!」
「あーあー。お兄ちゃんはくそ真面目でつまんないなー」
つまらなくて結構。というか宿題につまるもつまらんもねえってーの。ぶつくさ言う妹を尻目に自分の宿題の確認をする。高校三年生ともなれば、夏休みの宿題はほとんど出ないため、夏休み前半にほとんど終わらせている。残りも次に塾が休みのタイミングで片付けるから問題なし。今日提出する塾の宿題ももちろん終わらせてある。
「なんでそんなにちゃんとやってるのよう。わたしのお兄ちゃんなのに……」
「いいとこ見せたい相手がいるかどうか、だろ」
「ええ? あ! お兄ちゃん彼女に良いかっこするために頑張って勉強してるの!? ……まあ、お兄ちゃん彼女さん美人だもんね」
なるほど、と妹は深く頷いた。それから考え込んでいる。
「なんか、周りにそんないい男いない」
「周りじゃなくてもいいだろ。アイドルとかでも、推しに恥ずかしくない女になれよ」
「ええ、お兄ちゃんめっちゃ良いこと言う。そのワーク返して。自分でやる」
当たり前だろ、と言いたいのを我慢して、妹の方にワークを押しやる。そして妹はワークを抱えて自室に戻っていった。がんばれ、妹よ。




