アイスキャンデーって言いたい
暑い真っ昼間の日向。駅から目的の家まで汗だくで歩く。昼過ぎから夜にかけて家庭教師のバイトをしているので、そのお宅まで向かっていた。
途中のコンビニでアイスキャンデーを買うか悩む。食べながら行ってもいいけど、せっかくだから買っていって勉強前に食べようか。本来であればそんなことは禁止なのだけど、元々生徒が別のバイト先の後輩であったことと家庭教師の派遣元を経由していない、個人的な依頼による授業なので、つい気が緩んでしまうところがある。
そもそも、その娘が受験勉強のためにバイトを辞めると聞いて、もう少し一緒にいたくて家庭教師を買って出た……っていう不純極まりないスタートだから、余計に、なのかもしれない。
「……一応聞いておこうかな」
生徒の娘にアイスキャンデーを食べるか、スマホでメッセージを送る。すると返事はすぐに帰ってきて
『レモン味で』
の、一言だった。了解の旨を返信すると、ありがとうのスタンプが返ってくる。あっさりしたやりとりに見えるし、本当にあっさりしたやりとりでしかないけど、たぶん向こうに着いたら、満面の笑みで出迎えてくれるし、冷たいお茶と一緒に温かいお茶も出てくるのだろう。
その"満面の笑み"が見たいがために、アイスキャンデーにしろ、ついつい彼女を甘やかしてしまうのだと思う。物で釣るなんて、情けない限りだけど。
「さて、レモン味と……俺はどうしようか」
限定キウイ味にしようか。別にキウイが好きなわけではない。彼女が好きそうだと思っただけだ。こちらが良いと言えば交換しても良いし、半分こ……は図々しいかな。でもパイナップル味なんかも好きそうだし、悩む。
悩みに悩んでアソートパックを買ってしまった。余ったら、他のご家族に食べてもらえばいいから良いか。本当に、とことん甘くて嫌になる。そんなことでしか気を引けない自分が間抜けだ。
「こんにちは」
「あ、先生! いらっしゃい!!」
それでも彼女が笑顔で出迎えてくれたら、全部がチャラになってしまう。溶けたアイスキャンデーより、余程俺は甘いようだ。




