割ったことないの?スーパーボール
「あ、スーパーボール! 懐かしいですね! 子供の頃、めっちゃ割りませんでした?」
「え、割ったことないけど」
仕事帰りに、会社と駅の間の神社でお祭りをやっていた。そこら中に露店が出て、その中の一軒で後輩が足を止めたので、釣られて立ち止まると、スーパーボール掬いだった。
「割ってどうするの?」
素直に疑問を呈すると、後輩の男の子は言葉を詰まらせる。スーパーボールは床にぶつけて、はねさせて遊ぶものだと思っていた。というか子供の力で割れるんだっけ?
「どうって言われると、確かになんで割ってたんだろう??? って感じなんですけど……。でも割って、粉々にしたり、断面を綺麗に磨いたりして遊んでましたね。なんででしょうね、ほんと」
彼は困ったような顔で首をかしげてしまった。
まあ、子供って意味のわからないことに夢中になったりするしね。それに男女ではまることに差があったりもするし。私は自転車で近所の林を爆走していたが、彼はどうだろうか?
「先輩はお祭りだと何が好きですか?」
「あんず飴かなあ。あと綿菓子」
「あ、いいですね。少し寄っていきます? メジャーだからきっとどこかにありますよ」
どうしようか。せっかくだから覗いてみようか。隣の後輩男子から期待溢れる眼差しが送られていることだし、このまま帰るという選択肢はなさそうだ。
「じゃあ、行こうか」
そう言うと、彼は満面の笑みで「ご一緒します」と着いてきた。犬だったら尻尾がちぎれんばかりに振られていたに違いない。
それから二人で露店を冷やかし、後輩に綿菓子を買ってもらい、結局一通り見て回ってしまった。
「時間かかっちゃったね。そろそろ帰ろうか」
「そうですね。名残惜しいですが明日もありますし帰りましょう」
祭りの喧噪を背に駅に向かう。改札を過ぎたところで、後輩に声を掛けた。
「これあげるよ」
「いつの間に買ってたんですか」
差し出したのは袋に入ったスーパーボール。後輩は受け取って、嬉しそうに揺らした。
「割らないんだよ」
「しませんよ。大事に飾っておきます」
私の鞄にも同じものが入っている。家に帰ったら、童心に帰って投げてみようか。




