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花火、まだ下から見てるの?

「遅くなっちゃたなあ」

 夏休みだというのに、藤丸立香は何故薄暗い構内を走っているのか? 夏休み明けの文化祭に向けて、クラスの催し物の準備をしていたのだ。それが思いのほか遅くなってしまい、慌てて片付けをして教室を飛び出たのが今である。

 昇降口開いているかな。開いてなかったら職員用玄関を使わなくてはいけない。絶対怒られるやつ……。

 なんて焦っていると、突然外から光が差し込んだ。びっくりしてそちらを見ると、続いて大きな音もする。どうやら近所の河川敷でやっている花火大会の日だったらしい。

「そっかー……先輩と行きたかったな……」

 そう呟いたのと同時にスマホが震えた。画面を見ると、まさかの渡辺先輩だ。

「えっと? 特別棟の屋上? ……え、いるの????」

 場所だけ書かれたメッセージに首をかしげる。丁度今いる廊下から特別棟が見えるけど、暗くて屋上の様子まではわからない。しかし大好きな先輩の呼び出しとあらば、胸を高鳴らせて向かうのが女子高生である。私は猛然と駆け出した。


「はぁ、はぁー……」

 階段を駆け上がり、屋上の扉の前で息を整える。よし、いざ!

「あら、かわいらしいお嬢さん」

「???? 誰?」

 扉を開けたら小柄なおかっぱ美女が微笑んでいた。これは一体?

「藤丸、こっちだ」

「先輩!」

 呼ばれて顔を向ると、渡辺先輩がこちらに向かってきていた。そしておかっぱ美女を手で追い払うと、私の手を引いて(!)誰もいないフェンス際まで連れて行ってくれた。

「呼び出して済まない。廊下にいるのが見えたから、一緒に花火を見たくて連絡してしまった。迷惑ではなかったか?」

「全然!!! そんなことないです!!!! 私も渡辺先輩と花火、見たかったです」

 つい、言ってしまったけど、結構恥ずかしい発言では? でも先輩も私と見たくて、と言ってくれた。それは、どういう?

「今いたのは金時の幼なじみだ。今日は風紀委員の集まりがあって、それについてきてな……」

 なぜか複雑な顔で、渡辺先輩はため息を吐いた。先輩の視線を追うと、確かに先程の美人は坂田先輩にぴったりくっついて花火を見ている。いいなあ。私もあれくらいしたい……。

「まあいい。花火を見よう」

「はい!」

 坂田先輩と幼なじみの人程じゃないけど。それでも渡辺先輩とできるだけくっついて(その間3センチくらい)見る花火は、自分の心臓の音がうるさすぎて、もう何が何だかわからなかった。


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