種までおいしいね、ひまわり
「ひまわり、偉いよね。種までおいしい」
そう言いながらコンビニで買ってきたらしい、ひまわりの種を食べるクラスメイトを眺める。彼女は一粒一粒、丁寧な手つきで種を割って、中の実を食べている。神経質なうちの母親が見たら発狂しそうだな、という気持ちと、でも多分、穏やかで温厚な父親はこういうの好きそうだな、とも思う。
「りんちゃんも食べる? おいしいよ」
「えっと……私、食べたことないんだけど、食べられるの?」
それ、と指さすとすずちゃんは豪快に笑った。
「あはは、そりゃ食べられるよ。食べ物としてコンビニに売ってるくらいだもん。別に私だって、その辺のひまわりから種だけむしって食べたりしないよ」
大笑いするすずちゃんに心なしか恥ずかしくなる。自分がまるで世間知らずの箱入り娘みたいだ。……あながち間違っていないのかもしれないけど。
「そ、そんなに笑わなくたって、いいじゃない。食べるよう」
「はいどーぞ」
すずちゃんが種をいくつかティッシュペーパーに乗せてくれた。これを……割ればいいのかな? すずちゃんがやっていたのを、見よう見まねで再現してみる。
「粉々になっちゃった」
「そんなに力入れなくても大丈夫だよ。親指の爪を面積の広いところに差し込んで……」
すずちゃんの綺麗で健康的な手が、私の貧相な手に触れる。並べてみると、その差は歴然で恥ずかしい。でも手を引けないのは、その温度が好きだからだ。この手にもっと触れていたいと思うのは浅ましいだろうか。
「わかった?」
「う、うん」
半分くらい上の空だったけど、なんとか教わったとおりにひまわりの種を割る。なんとか割れた殻からコロンと、小さな白い実が出てきた。恐る恐る口に放り込むと、香ばしい不思議な匂いがする。
「おいしい?」
「不思議な味」
「初めてだとそうかもね」
その後はすずちゃんと向かい合って、黙々とひまわりの種を食べた。これが他の娘とだったら、変に思われないかとか、おかしくみえてないかとか気にしていたかも知れない。
でもすずちゃんとなら。周りの目など感じることすらなかった。




