表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/460

夜の匂い、もう一駅歩く

 仕事を終えて、駅に向かう。ハイヒールでカツカツ歩いていると、夏の夜の匂いがした。

「もう少しだけ、歩こうかな」

 都会の夜は明るくて、人もたくさん出歩いている。同じように仕事を終えた人、陽気な酔っぱらい、今から仕事の人、賑やかな学生集団。

 そんな中、私は一人で黙々と歩いている。寂しくはない。たくさんの中の一人だけど、夏の匂いに包まれていると、不思議とひとりぼっちとは感じられなかった。

 そうやって歩いていると、隣の駅まですぐに着いてしまう。足の痛みはない。明日は休みだし、もう一駅歩こうか。

「藤丸?」

「渡辺……先輩?」

 名を呼ばれて振り向くと高校の時の先輩がいた。相変わらずの長身なイケメンで。あの頃と変わったのは、学ランがスーツになったことと、大人の色香が追加されたことだろうか。

「久しぶりだな。元気にやってるか?」

「はい。先輩はいかがですか?」

「元気ではあるが、少し忙しいな。藤丸はこんなところで何を?」

 ……何をしていたんだろう。歩いていた。ただそれだけだ。

「えっと、気分が良かったので……歩いていました」

 しかし先輩は怪訝な顔をすることはなく(高校の時からずっとそう、ポーカーフェイスだ。そういうところが、私は)、頷く。

「どちらに向かっている? 俺も帰ろうとしていたところだから、迷惑でなければ一緒に歩いてもいいだろうか」

「め、迷惑だなんて事ないです! 是非! 永代通りを目指してます! そこから東に向かう予定です!」

 すっごい力が入ってしまった。お恥ずかしい。先輩はやっぱりポーカーフェイスだけど、どこかほっとしたような顔になった。

「そうか、なら問題ない。一緒に行こう」

「はい!」

 そして二人で並んで歩く。今までの空白を埋めるように、いろいろな話をした。ずっとずっと、この時が続けば良いのに。

「って、よくある、願望くらいのつもりだったんだけどなー?」

「……まさか同じマンションとは……」

 並んで歩いた結果、なんと同じマンションの、隣の部屋であることが判明してしまいました。これは……運命では?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ