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曇りの日が一番焼ける

 暑い夏の日。曇ってはいるものの蒸し暑く、風は温い。体育の授業を終えた板倉伊織は汗をかきながら教室に戻る。先に戻っていたらしい女子生徒たちは既に着替えを終えていて、教室は制汗剤の匂いでいっぱいだった。

「いーちゃ……伊織君、おつかれ。冷却シートあるけど使う?」

「ありがと、佳花。もらうわ。あーひんやりー」

 伊織の隣の席で、幼なじみでもある水木佳花が差し出す冷却シートでありがたく顔やら首やらを拭く。べたついた汗を拭うと、それだけで大分すっきりした。

「この時期に外で体育はきついよね」

「今日は曇りだからまだマシかな。日が出てると肌がピリピリするし」

 そう苦笑する伊織に、佳花は呆れた顔をした。

「……曇りの方が日焼けするよ」

「ま、まじで」

 そう言われれば、腕とか頬がヒリつく気がする。冷やしたりした方が良いのか、伊織が慌てていると、大丈夫だよ、と佳花が宥めた。

「そのシート、保湿効果もあるから、顔だけじゃなくて腕とか首とか足とかも拭いておくと良いよ」

 そう言われて伊織は熱心に拭けるだけのところを拭いた。さっぱりしたし、肌のヒリつきも治まって気分が良い。伊織は急いで着替えて次の授業の教科書を出す。

 隣の席で佳花はその様子を眺めながら、男子ってしょうがないな、と思っていた。それを世話するのが楽しい女子もいるようだけど、佳花は世話はされたいのだ。伊織はそこそこしっかりしているけど、たまに抜けることがある。……そのギャップが良いという友人もいる。ギャップねえ。と佳花は彼の横顔を見た。やはりしっかりしている方が良いのではないか? ぼんやりしているのは自分だけで十分だ。

 伊織は真剣な顔で教師の話を聞き入っている。それを見て、佳花は素直にかっこいいなと思ってしまった。悔しいほどにかっこよくて、ふと佳花の視線に気付いた伊織がチラリと彼女を見て微笑む。佳花の完敗だった。


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