トウモロコシの綺麗な食べ方
「弁当にトウモロコシ、だと?」
とある高校の昼休み。弁当箱を開けた藤丸立香は眉間に皺を寄せた。
「良いじゃん、トウモロコシ。あたし好きだなー」
「わたくしも良いと思いますよ。甘くておいしいじゃないですか」
立香と一緒に食事を取っていた友人の鈴鹿と清姫の2人は
『何か問題でも?』
という顔を彼女に向ける。しかし立香はむすっとした顔のまま叫んだ。
「だって、歯に詰まるし、手も汚れるじゃん。放課後に綱先輩と約束してるの! 歯にトウモロコシ挟んで行くわけにはいかないの!」
鈴鹿と清姫はあ~、と思い至った顔で頷く。3人ともうら若き女子高生である。思い人の前にみっともない姿を晒したくない……という思いは共通だった。
「トウモロコシがどうかしたか」
「ひわっ!? つ、綱先輩! どうしてここに!!!!?」
立香の思い人であり、放課後に約束をしていた渡辺綱が唐突に彼女の後ろから現れた。鈴鹿と清姫は『どうも~』と穏やかに挨拶をするが、立香は頭が着いていかずワタワタしている。
「昼食を終えたから金時と体育館に行くところだったんだが、ふと見たら立香が眉間に皺を寄せて弁当箱を睨んでいたんでな。どうしたかと見に来た」
「そ、そんなの見に来なくて良いのに」
「で? トウモロコシがどうした?」
「え、えっと。食べにくいので……どうしよっかなって……」
さすがに思い人に歯に詰まるから、手が汚れるからイヤ、などと子供っぽいことは言えず、立香はやんわりと濁した。しかし綱はなるほど、といって手を伸ばしトウモロコシを持ち上げる。
「トウモロコシはこうやって、縦に一列、先に粒を取って……。それから指を入れて横に押せば簡単に取れる」
「わ、すごい」
「後は自分でやってくれ。じゃあまた放課後に」
綱は手を振って去って行き、後にはぽかんとしたままの立香と、ニヤニヤする鈴鹿と清姫が残された。
「ね、ねえ。この綱先輩が触ったトウモロコシ、冷凍保存しておいた方がいいかな」
「いや、食べなよ」
「うふふ、立香さんは先輩手ずから食べさせて欲しかったんですよね」
鈴鹿の冷静なツッコミと清姫の指摘に立香は顔を赤くする。どっちの言うことも、ホントその通りなんだけど。
「あ、ホントだ。すっごい食べやすい」
綱に教わったトウモロコシの剥き方を試しながら、立香は放課後彼にまずなんと言うかを考えることにした。




