海が開いた
「あら、ついに開いたのね」
「なにが? アジ?」
「海よ」
子供たちが学校に行った後、ニュースで今年も海開きが成されたと報道していたので、思わずつぶやいたら、横で本を読んでいた旦那が素っ頓狂なことを言っている。アジを開くのはそんなに大変じゃないけど、どう考えても開いてある物を買うのが一番コスパがいいので私は開かない。
「海かあ。行く?」
「そうねえ。散歩しに行きましょうか」
「それ開いてなくてもいいでしょ」
まあそうなんですけど。でも水着持ってないし、そもそも泳げないし、入る必要はない。子供らが小さいときは連れて行ったりもしてたけど、もう2人とも高校生だし、行きたければ友達なり彼氏なりと行くだろう。
「賑やかしに行きましょう。ぶらぶら砂浜を散歩して、海の家で焼きそばとかたこ焼きを食べて帰ってくる」
「じゃあ帰ってきたらシャワーを浴びてかき氷を食べて、夕ごはんは僕がそうめんを用意しよう。子供らには学校から帰ってくるときに天ぷらを買ってくるよう連絡しておくよ」
「すごい。夏休みね」
そうと決まれば準備をしよう。といっても軽く化粧をして日焼け止めを塗って鞄を持つだけだ。旦那は本を片付け財布をポケットに入れておしまい。
我が家は海から近いので歩いて行くことにする。バスに乗っても良いけど、せっかくなので歩いて行こう。
太陽はとてもまぶしくて、夏の準備をしているようだ。じわじわと蝉も鳴き始めている。本物の夏休みもきっとすぐに来るし、そうこうしているうちに秋もすぐに来てしまうのだろう。
砂浜は予想通り、そこそこの人手だ。それでも溢れかえるほどではないのは、この辺りの学校がまだ夏休みに入っていないからだろうか。未就園児と母親や、私たちと同じように散歩する夫婦なんかが多い。
「よし、歩こう」
ここまでも歩いてきたはずなのに、旦那は気合いを入れ直している。そういう人だから、ただ歩くためだけの外出にも付き合ってくれるのだ。ありがたいことだと改めて思いながら背中を追う。




