めでたいけど、ご祝儀貧乏
20代も後半になると増えてくる出費。それがご祝儀だ。友達や会社の人や、いとこや、なんやかや。そういったお金の工面に日々つらみを感じる。30過ぎれば減るかなあ……。ていうか、私がもらう側になりたいなあ……。まあ、そんな予定ありませんけど!!!
そんなことを考えつつも、表面上は笑顔でパンをかじりながら隣の席の同僚と談笑したり、タイミングを合わせて拍手をしたりしている。あー、この肉おいしいなー。
披露宴を終え、帰る前に式場の喫煙所で休憩をしていく。あー、煙草うまーい。先程披露宴で出されたごはんも結構おいしかった。ちゃんと料理にお金かけたんだなとわかる、おいしいごはんだった。しかし、それはそれである。堅苦しい表情もせず、背筋も曲げまくりのだらけた格好で吸う煙草のうまさよ。別格だ。
などとくつろいでいたら、一人きりだった喫煙所に人が入ってきたので多少背筋を伸ばす。同世代くらいの男性で、目が合ったので軽く会釈しつつも見覚えはないので知らない人だろう。気にせずスマホ片手に喫煙を続ける。この後どうしようか。今回の披露宴は同僚のものだったけど、最近皆さん式が続いていてしんどい、という素直な諸先輩方の計らいで二次会はない。だからまっすぐ帰って、スウェットにでも着替えてラーメンとか食べに行こうか。
「すみません、火を借りてもいいですか?」
「はい、どうぞ」
先程入ってきた男性にライターを貸す。どうも手持ちのライターは火が付かなかったようだ。私の煙草ケースを見ると使い捨てのライターはまだいくつか入っている。
「よろしければ、それ差し上げます。ライターはまだいくつか持ってますので」
「ありがとうございます。ありがたく、頂戴します」
男性は穏やかな笑みでそう言った。その顔のまま話を続ける。
「あの、先程○○さんの披露宴に参加されてました?」
「あ、はい。新郎の同僚です」
「そうなんですね。ぼくは新婦の従兄弟です。新郎側に女性が参加されているなんて珍しいなと思って覚えていたんです」
「そうかもしれませんね。私と新郎は同期で同じチームに配属されているんです。そのチーム内で女性が私だけなのですが、私だけ新婦側の席というのも居づらかろうということで、新郎側に座らせてもらってました」
そうなんですね、と穏やかに彼はうなずく。
お? これはもしやナンパ的なあれか? ついにご祝儀回収側に回るチャンス?
「あ、もうこんな時間なんですね。家で妻と子が待ってるんで、あまり時間なくて。失礼します」
そして男性は去って行った。
あーーーーー、煙草うまーいな。私も煙草を捨てて立ち上がる。予定通り、ラーメン食べに行こう。泣いてなんか、いない。




