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最後に父と飲んだのはいつだろう

「ただいま」

「おかえり」

 実家に帰ると父が出迎えてくれた。久しぶりに見る父は髪の白髪が目立つようになり、一回り小さくなったような気がする。でも昔と変わらない、穏やかで、一緒にいると安心できる父だった。

 僕、吉川景斗は普段は大学の近くで一人暮らしをしている。しかし今日は部屋の荷物が増えてきたので、去年使った教科書などを実家に置きに来たのだった。荷物を置いたら用事は終わりだけど、せっかくなので少し休んでいくことにする。リビングに顔を出すと父がお茶を煎れてくれて、お菓子も出してくれた。

「母さんは?」

「仕事だ」

「相変わらず忙しいんだ?」

「このご時世だからね。誰かに話を聞いてほしい人はいくらでもいるんだよ」

 僕の母の職業はカウンセラーである。ただし、相手は人間の場合もあれば、そうでないこともある。だから怪異や妖怪、ごくまれに神様紛いの存在からも話を聞くことがあるそうだ。そういう母が、何故、人畜無害な父と結婚に至ったのか聞いたことがある。

「お父さんはね、寄せ付けない人なのよ」

 とのことだった。詳しく聞いたら、幽霊や妖怪、怪異、果てはご先祖様の類いまで、そういうものを一切合切はね除けてしまう体質なのだそうだ。人間だけでなく、怪異の相談も受ける母なので、いろいろ背負ってしまっている人間の相談ももちろん受けるが、中には母の方にくっついてきてしまうこともある。もちろん自分で追いやることもできるけど、父の隣に行くと勝手にその手のがいなくなるらしい。だから、父といると居心地が良くて安心すると、何にも脅かされずに過ごせるのだと、そう言っていた。

 しかし当の父はその理由を知らないらしい。それでも両親は仲がいいし、穏やかに過ごしているので僕としては言うことはない。

「大学は楽しいかい?」

「楽しいよ。勉強は面白いし、友達もいるし」

「彼女は?」

「できないなあ」

 なんてのどかな会話をして実家を後にした。

 ……もしかして、花子ちゃんは僕の実家に上がれないのでは? 父にはじかれてしまうのでは……。と、いうことに帰りの電車で気づいてしまった。事前に母に相談した方がいいのかもしれない。まあ、そもそも付き合ってもないんですけど!

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