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動かなくたって旅はできる

「うーん」

 図書館にて、あたし、ヴェロニクはいつも通りソファに座って歴史書を読んでいた。でもどこそこで、これこれがって言われても場所がピンとこない。困っていたらこの国の王子であり、あたしの友人でもあるエロワがやってきて地図を見ればいいと案内してくれた。そして何故か彼も地図を持ってきて、横でうんうん唸りながらページをめくっている。

「どうしたの」

「いや、今度挨拶に行く近隣の国の地理を確認しているんだがな。ちょっと厄介な感じで」

「厄介?」

「これ」

 見せられた地図を見ても、見方がわからないあたしにはピンとこない。首をかしげるとエロワが説明してくれた。

「この緑になっているのが山で、色が濃いほど険しい」

「……この国は山だらけってこと?」

「そうだ。ほとんど四方を山に囲まれていて、しかもかなり険しい」

「それの何が厄介なの?」

 エロワは眉間にしわを寄せて言い方を悩んでいるようだ。

「まず、行き来に困難が生じるから向かう準備が困難である。次に今まで国交がなく、今回初めて伺うから不測の事態に対応しかねる。この場合の不測の事態とは俺の拉致などだ」

「やばいじゃん」

「そうなんだよ。けど身代わりを立てるわけにも行かないし」

 そうなのか。でも初めて向こうに行くなら、別に他の人でもわかんない気がするけど。

「国際会議とかで顔を合わせたことはあるからな。先方も俺の顔くらい知ってるさ。それになあ……」

「まだなんかあんの」

 うんざりして聞いてみる。エロワは困った顔のまま口を開いた。

「戦になったとき、攻めづらい」

「その予定がある?」

「ある」

「そうか」

 それに、エロワは行くのだろうか。行くとして、帰ってくるのか。

「そんな顔をするなロン」

「どんな顔だよ」

「泣きそうだった」

 逆に何故かエロワは嬉しそうだ。なんでだよ。

「大丈夫。そんなすぐの話じゃない。ほら、ロンも調べ物があるんだろ」

「う、うん」

 エロワに乗せられる形で読んでいた本と地図を付き合わせる。それはそれで面白かったけど、それでもエロワが言った戦の言葉が頭から離れなかった。

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