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未分類小説集

断罪イベントの後で…。

作者: 彩音

悪役令嬢物を読んでて気になったことを小説風に書いてみた。

今回は珍しく百合じゃないです。

 ここを牢獄。と言っていいのかどうか。

 確かに前面には鉄格子が嵌められているし、中の人物は囚人服を着せられている。

 ただ牢内にトイレもあれば風呂だってあるという環境。

 それらは薄いカーテンで仕切られているおかげで外から使用中の姿は見られることがない。

 贅沢なものだ。と思う。

 貴族であるというだけで罪を犯してもこの扱い。

 平民であればもっと劣悪な環境におかれて刑が言い渡されるよりも前の時点ですでに刑が執行されているも同然のような感じであるのに。


「誰かと思えば貴女でしたの」


 牢の住人である元侯爵令嬢がベッドに腰かけつつ目線だけこちらに向けて話しかけてくる。

 さすがは腐っても元侯爵令嬢。貴族の中でも社交界の花と言われていただけあってその容姿はこのような立場になっても尚、気品に溢れ、気高く知的で美しい。


「お久しぶりです。リズレット様」


 牢の前でカーテシーをして改めてリズレット様を見る。

 皮肉気に歪ませる唇。私のことが憎くて堪らないという感じだ。


「こうならないように努力してきましたのに、どうしてこんなことになったのよ…」


 それは逆にそうしたから起こったのだ。

 前世の記憶を使って足掻いたから侯爵令嬢は悪役令嬢となってこうやって牢へと投獄された。

 足掻くのは良いと思う。でも足掻き方が間違えてるとしか言いようがない。

 殿下と婚約して婚約者となった後で隣国へ行き、あちらの皇子と個人的に交流を持てばそれは当然こちらの国に対する裏切りと売国行為とみなされるのは当たり前だ。

 私が殿下やその取り巻きの方々と仲良くしているのを見て、逆ハーエンドを迎えようとしているとそう思った?

 だから断罪イベントで私が貴女に罪を着せてその事実はないと私をざまぁする。

 そのつもりだった?

 けどね、私は逆ハーエンドなんて迎えるつもりは最初からなかった。

 殿下や皆さんと話していることはおべっかが八割、残りは政治や剣・魔法に関するもの、他にただの雑談だけ。

 そこに色恋沙汰の話なんて欠片もない。

 他の貴族の令嬢たちと同じだ。家のために強い人と繋がりを持とうとしていただけ。

 それを貴女は勘違いした。ちゃんと調べもしなかった。それが貴女の敗因。

 私をざまぁした後は隣国へ行って仲良くなった皇子様と結婚でもするつもりだったのかな。

 本当に尻が軽いのはどっちだろうね?

 私はそれが分かってた。だから殿下に頼んで王家の影を貴女につけてもらった。

 悪役令嬢がヒロインをざまぁして幸せになる物語。

 貴女はそのようにするつもりだったんだろう。

 でも婚約者がいるのに別の人に近づくってそれ立派な浮気だよ。

 貴女が私に言っていたこと自分自身に当て嵌まってるじゃない。

 それでよく私に言えたよね。

 

 ところで今回そんなことはなかったけど、婚約破棄されてその途端に隣国の皇子が貴女を迎えに来たらそれは大問題だよ。

 こちらの貴族だけではなく、あちらの貴族の人たちに自分たちは尻軽です。

 ってアピールするようなものなんだから。

 物語ではそれによってヒロイン側の国・こちらの国が潰れるけど、現実的にはあり得ない。

 浮気していた相手を迎えに来て皇太子妃にするような皇子って信用できる?

 すぐに貴族たちの間でその情報が広まってその皇子は排他されるよ。

 

「バカですね」


 つい口からそんな言葉が漏れてしまった。

 それによって私を睨むリズレット様。


「貴女、どうしてそんなに冷静なのよ。乙女ゲームのヒロインに転生した転生者って言ったら現実とゲームの区別がつかないお花畑な奴っていうのが定番じゃない。なのに…」

「それ。私、不思議に思ってたんですよ」


 だって私たちの元の世界はフルダイブ型VRが普及しているわけじゃない。

 乙女ゲームやると言ってもソシャゲか家庭用ゲーム機。

 【画面】を通して世界を見ている。のにこんなリアルな世界に転生してどうしてここを現実ではなくゲームの世界だと思えるのか。

 それにポッと出てきたわけでもなければ転移してきたわけでもない。

 生まれ落ちて育って来てそれでもゲーム世界って思えるその思考。

 こ わ い よ。

 そんな人たちでも前世は女子校生とかOLとかそんな人たち。

 前世でちゃんとやれてたのになんでこっちではゲームだって思えるんだろうね。

 地球で言うと芸能人を見てここはドラマの世界だ! って思ってるのと同じような感じだよ。

 強制力的なものが働いているんだろうか。そうじゃないと説明つかない。

 私は私のままで良かった。そうじゃなければ今頃リズレット様と立場逆だったかもしれなかった。


"ほっ"と胸を撫でおろす。

 そう言えば私は陛下に頼まれて処分を伝えに来たのだった。忘れてた。

 貴族専用の牢獄だから雰囲気はそんなに悪くないけど、だからと言って長居したい場所じゃない。


「リズレット様、貴女の刑が決まりました。三日後に断頭台だそうです」

「そう…」


 項垂れるリズレット様。

 私はそんなリズレット様をちらっと見た後、踵を返す。

 ありがとうリズレット様。貴女のおかげで私の家は子爵から伯爵になりました。

 重要な情報などが隣国に渡るその前にそれを防いだことによる恩賞だそうです。

 逆に貴女の家は取り潰しらしいですよ。

 前世の記憶を持ちいて領の発展に貢献したのは良いけど、作ったものを隣国に手土産として持って行ったりするからですよ。

 そのおかげで貴女は留学という私との対決の際に必要なアリバイを手に入れた。

 でもそれって私が貴女を自作自演で嵌めようとしなければ意味のないことなんですよ。

 バカですね。リズレット様。すべてのヒロインが何も考えないバカだと思ったりしなければこんなことにはならなかったのに。

 さようなら。貴女のことが……大嫌いでした。

 


 ゲームでは本当に孤高の女性って感じで素敵だったんですよ。

 それを貴女は…。断頭台での貴女を私は見に行くつもりはありません。

 ゲームのリズレット様に詫びながら死んでいってくださいね。

 では私はこれで…。

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