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魔宝石物語  作者: かうる
魔女と狂気の王子(下)
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神殿の良心

「ほんっと、なってないわ!」


 神聖な神殿の中でもとびきり清涼なる空気に包まれた一角がある。奥之院。神の巫女と呼ばれる姫巫女専用の宮だ。その神殿にあって限られた者しか入れぬその宮に今、一人の若い修道女が髪を揺らしながら入っていった。

 憤慨しながら入ってきたのは年若い修道女。マーガレットの様なオレンジの髪が揺れる。怒りが全身から漏れ出している。


「お茶ひとつ満足に淹れられないなんて。この国の令嬢たちは一体どんな教育を受けているのかしら?」


 ドンと置かれた茶器。カップとソーサーとポット。透明な硝子のポットには濁った琥珀色の液体が。注ぎ口からは湯気が立ち上り、液体の中を茶葉がプカプカと浮いている。


「リアナ、そんなにカリカリしなくても……」

「何を呑気な!これは貴女が舐められてますのよ⁉︎」

「仕方ないよ。私には威厳なんてないもの」

「そういう問題ではありませんの!」


 気の強い修道女リアナの態度はいつものこと。宥める事もなくぽわんと微笑む少女とも呼べる年若い女性に対し、修道女はキッと眉根を上げた。


「アナタはこの神殿における象徴シンボル『姫巫女』なのよ!地位に見合った施しを受けるのは当然の権利ではなくて?」

「そんなものを受けたくて、この仕事を引き受けた訳じゃないから……」

「そんなだから相手に付け入る隙を与えるのよ!」


 まるで姉に怒られた妹のように肩をすくめた少女。彼女こそ、この神殿に於いて最高位に立つ『姫巫女』であった。

 見に纏う衣は白を基調とした聖職衣。裾には金糸で刺繍が施されており、背に掛けて幾何学模様が描かれている。所々施された小さな宝石いしが、彼女の繊細な容姿を一層引き立てている。

 姫巫女と呼ばれる者はこの神殿には唯一人。神殿の頂点に立つ神の巫女。預言者。神託により未来を予言する者。神徒。ライザタニアに於いて王族の次に権威を持つ者の名がそれである。ーーが、彼女は権威を欲してこの地位へ着いた訳ではなかった。


「そこまでになさりませ」

「まぁ、司祭さま」

修道女シスターリアナ、貴女も姫巫女様を困らせたい訳ではありますまい?」


 姫巫女と修道女の間に割って入ったのは、この奥之院に足を踏み入れる事のできる限られた者のひとり。司祭の肩書きを持つ盲目の男であった。

 長い前髪の間から見える瞳に光はない。肩口まで伸ばされた淡い金の髪。年の頃は三十前後。大変柔らかな物腰で、所作などから女性的にも見え、男性的な欲を一切感じさせない雰囲気を纏う。


「ですが司祭さま。ほんっとに酷いんですのよ?」

「ええ。貴女の気持ちは嫌と言うほど解りますとも」


 この神殿に勤める者の半数は、神に仕える意味を理解していない。それどころか神への信仰を金儲けの道具にしている節すらある。しかもその筆頭が先の枢機卿であり、現在その後を引き継いで神殿を取り仕切る大司教なのだ。救いがないと思わずにはおれない。

 そんな悪環境に嘆く司祭神官がいないといえば、そうでもなかった。神殿の在り方を正したいと考える者も、少なからず存在していたのだ。


「嗚呼、これでは行儀見習いの方がもう少しマトモですね」

「でしょう!」

「えっ、そんなにヒドイの?このお茶」

「「ええ」」


 珍しく修道女と司祭の意見が完全一致する。

 手にしたカップに注がれた液体の匂いを嗅ぐなりゲンナリとした司祭に姫巫女ーーアーリアの表情は驚きに満ちた。いつも穏やかな司祭がこれ程何かを酷評した事がない。

 だが、いくら常に平穏を心がけている司祭であっても、許せぬ物というのは存在する。利権を欲する神官。腐敗を好む戦争屋。時勢を読めぬ愚者。そして、絶望感しか生まぬ茶……


「お湯の温度、茶葉の量、蒸らす時間、何をとっても最低です。最早、絶望しかない……」

「そんなに⁉︎」

「後で私が淹れなおすわ」

「え、ありがとう……?」

「気にしないで。これは私の為でもあるんだから」

「はぁ……?」


 姫巫女が首を傾げれば、司祭は「私たちの心の平穏の為でもあります」と微笑む。この笑顔に弱いーーいや、押し切られるであろう事を知る姫巫女は頷くしなかない。


「さて姫巫女。私が此処へ来た本来の目的を果たしましょうか?」


 司祭は終ぞ口をつける事のなかったカップをソーサーへ戻すと、姫巫女へと向き直った。「姫巫女、こちらへ」と促すと共に続きの間へ入る。2人の後を修道女が続き、間仕切り代わりの厚いカーテンを閉める。

 足取り確かな司祭のエスコートを受けた姫巫女は勧められるまま椅子に座る。そこへ司祭の長い指が伸びてきて、姫巫女の顔のラインを確かめるように指が這い、最後にそっと頬へ手が添えられた。


「どこか身体の不調はございますか?」

「いえ、特には……」


 司祭の触れた頬。その穏やか体温に触れる。男性的な力強さや欲望といったもののない手からは嫌悪感はないが、少なからず緊張はするもの。医者と接する時のような居た堪れなさを感じた。


「嘘おっしゃい。今朝も立ち眩みがあっでしょう?」

「リアナ!」

「ふふふ。姫巫女は良い修道女をお持ちだ」

「ええ。私には過ぎた人です」


 記憶を失くし漂うようにして辿り着いた神殿。そこでの役割は、自分の想像したものではなかった。

 神の声を伝える『姫巫女』。だが、そのような力は自分にはなく、あるのはただ人の傷を治す癒しの力のみ。そんな者が姫巫女の名を語ってよいのだろうか。

 軍務長官を務める義兄と、何より婚約者だという第二王子殿下に頼みとあれば断る事などできない。不安に苛まれながら就いたそのすぐ後にやってきてくれたのが、修道女リアナであった。

 外国から伝手を辿って来た修道女リアナは、姫巫女たるアーリアの事を無闇に敬う事はなかった。謙る事もなく、真正面からぶつかってくるリアナをアーリアは慕った。リアナの心に嘘偽りがなかったからだ。

 そうして修道女リアナは新人ながら姫巫女つきとなった。いや、もぎ取ったと言うべきか。


「瞳に、余分な力が入っていますね」

「眼精疲労みたいな感じですか?」

「まぁそんな所です。念のため、心安らかになるしゅをお掛けしましょう」


 司祭はまじないの言葉を口ずさむ。柔らかな声音に魔力が重なる。周囲の空気が揺れ、精霊が踊り出す。



「ー神のご加護がありますようにー」



 この盲目の司祭こそ『神に選ばれし者』ではないのか。姫巫女と呼ばれる自身よりもずっと人々に寄り添い、神を一途に信仰している。その事実を含めそう思う事が度々あったアーリアはこの時、これまで以上にそう思えてならなかった。


「司祭さま、よくこれまで無事でいられましたね?」

「はい?なんです、藪から棒に」

「ほら、この神殿って、外見はともかく中は見た目を裏切る腐敗ぶりでしょ。ヒヒジジイどもの餌食エジキになりそうじゃない?」

「……修道女シスターリアナ、あまりそのような事を口にするのは関心しませんね」

「平気ですわ。この部屋には3人しかいませんもの」


 治療が終わり司祭の手が姫巫女の頬から離れた時を見計らって、修道女は声をかけた。いつの間に用意したのか、丸卓には司祭と姫巫女二人分の茶器を置かれており、修道女はお盆片手に不敵な笑みを浮かべている。


「随分と私を高く勝っているのですね?」

「あら、だって、司祭さまは現状に満足なさっておいでじゃないでしょう?」


 ニッコリ微笑んだまま肯定も否定もしない司祭。


「下手なコトは口に出さない。当たり前ね。身を滅ぼすもの」

「ええ、どこにでも耳があり目があるものですから」

「そうね、でも安心して。私たちは貴方のことを売ったりなんてしない。だって私たち、神殿の内部組織になんて興味ないもの」


 馬鹿正直な告白に司祭は苦笑を浮かべると、嗜めの言葉を口にした。


「一応、貴女も神殿所属の修道女なのですよ?」

「だからって、いち修道女に腐敗した組織を立ち直す力なんてあると思う?ないわよ。それに私は追放ながされて此処にいるのだもの。何かしようにも人脈はないし、そもそも立ち位置的には部外者もいいところでしょう?」


 身も蓋もない、実に現実的な発言を宣う修道女は一層清々しい表情だ。一方、姫巫女は対照的に硬い表情になった。

 姫巫女つき修道女リアナは元来からこの国の者ではない。その事をリアナ当人から聞かされていたアーリアだが、何もここまで暴露しなくても、と胸中は複雑だ。例え司祭が信頼できる人物だという事は分かっていても。

 そもそもリアナは心から姫巫女に支えている訳ではない。姫巫女アーリアの事はあくまでも()()()であり、本命は『本国にいる皇太子の役に立つこと』なのだ。その為だけにリアナはアーリアに味方し、そして今、司祭がどう動くか反応を見ている。これ以上信頼して良いかどうかを確かめているのだ。

 それを察すればこそ、アーリアの胸は締め付けられる思いになる。リアナが自分の巻き添えで処分されるのではないかと、心配になるのだ。


「リアナ……」


 自身の付き人を諌めるかどうか思案するアーリアは肩に温もりを感じ取り、ドキリと胸を跳ねさせた。

 頬を擽る金の髪。肩には温かな手。口元には柔らかな微笑み。まるで何も心配するなとも言いたげな司祭の微笑みに、アーリアは肩の力を抜いた。


「……それでリアナ、さっき言ってた司祭さまの無事が云々というのは、なんの事なの?」

「ああ、あれね?この神殿ってヤバイ連中の巣窟なのよ」

「へ?ヤバイ連中?」


 リアナの顔に修道女にあるまじき類の笑みが浮かぶ。もしこの場に何処ぞの不良騎士セイが居たなら、「公爵令嬢って存外ゲスいんだね?」とツッコんでいただろう。真面目騎士ナイルならば黙っていただろうが。だがその理由も保身からではなく、暗に『思い当たる節があるから』であろう。


「端的に言えばヘンタイってこと。幼女趣味ロリコンは勿論のこと、少児性愛ペドフィリアも多数混じってるっていうのよ?貴族ってどこか歪んでいるから、石を投げれば性的少数者ヘンタイどもにぶつかるのは知っていたけれど……流石に帝国もここまでじゃあないわ!」

「ペド……?」

「気にしないで。そんな言葉覚えなくていいから」

「う、うん」

「同性愛者も多いのよねぇ。……別に反対してる訳じゃないのよ?お好きになさってと思うくらいで」


 実際問題、同性愛者の存在は世間的には認められている。しかし、そこに家督問題や家の存続が絡んでくる場合、もし家を継ぐ者がそうであったなら、話し合いは必須であろう。血を繋ぐ事を重んじる貴族の話し合いをだ。

 それも最近では、血の近しい者を養子に入れる事で解決する傾向にあるようで、内情を知る元公爵令嬢リアナからすれば「お好きにどうぞ」という気持ちになるのだ。


神殿ココも一応は閉鎖的な環境だし、きっと捌け口が少ないのね?だから司祭さまのような男性ひとが今まで無事であったのが不思議で……」

「えっと。司祭さまもその様な人たちに狙われる可能性があるってこと?」

「だって、この容姿かおよぉ?」


 2人の目線が司祭の容姿を注視する。マジマジと見つめられた司祭は困惑した後、麗しい容姿を僅かに歪めた。


修道女シスターリアナ、貴女という人は……ッ!」

「なぁに?こんなのは常識じゃない。今さら驚くべき事実コトではないわ」

「それはそうですけどね。物には言い様というものが……」

「あら?貴方はその辺の事情にも通じていると思ったのだけど、違ったのかしら?」

「え……ええ、まぁ、そのような趣向の者が存在するのは存じております。ですが……」

「あら!マサカもうその毒牙に掛かった事がおありなのかしら?」

修道女シスターリアナ!」


 身も蓋もない修道女の発言に流石の司祭も声を荒げた。その異常事態に姫巫女アーリアも自身の修道女を嗜め始めた。


「リアナ。いくら司祭さまがお優しいからって、揶揄い過ぎじゃないかな?」

「あら、ごめんあそばせ?」


 言うほど反省の色はない修道女に対し、司祭も無言だ。美人の無言ほど怖いものはない。


「でも、これは純粋な疑問なのよ?それに心配でもあるわ。司祭さまは私たちにとって掛け替えのないお人ですもの」

「……貴女が言わんとする事は解ります。此処には貴女たちの味方と呼べる者が極端に少ない。警戒するなという方が無理がある」

「お茶ひとつ満足に淹れられないものね」

「そんな貴女たちにとって唯一の理解者が私なのでしょう。なのに、私は味方にするには余りに弱い。何より、このハンディキャップが致命的ですからね」


 ハンディキャップとは言わずもがな、司祭の目を指す。生まれつきの盲目。それは常人であれば生きる上で大きなハンデとなっただろう。しかしーー


「失礼ながら、私は、司祭さまからハンディによる精神的負担をあまり感じないのですが……」


 アーリアには司祭が他人ひとが言うほど不幸には見えなかったのだ。

 歩く時も杖を使わず真っ直ぐ歩く司祭の姿はとても視界にハンディキャップを持っているとは思えない程に普通ナチュラルだ。加えて、己の持つハンディキャップを物ともしない姿勢、言動、立居振る舞いからも、悲劇の色は見受けられなかった。


「目が見えぬ事など些細なもの。私には精霊たちがおりますから」

「でも、一般的にはハンディには違いないわ。狙われ放題ではなくて?」

「ええ。他者が()()を理由に私を侮ってくれる事は、私にとってはメリットになります。相手は私が目が見えぬ事を知るや、必ずと言って良いほどボロを出しますからね」

「まぁ、したたかですこと」


 常に司祭へと寄り添っている光の精霊たち。名指しされた彼女たちはそれは嬉しそうに飛翔し、愛おしそうに頬を擦り付けている。


「前姫巫女だったヒト。あの公爵令嬢も大概だったのではなくて?かなりの男好きだったって聞いたけど」

「ああ、彼女の事ですか……」


 出てきた名にゲッソリとする司祭。


「貞淑さなんて何のそのって噂で聞いたわよ?」

「ははは、貴女は相当情報通なようですね」

「情報は金に勝るのよ」


 ドヤ顔の修道女を前に首を竦める司祭。


「ご承知のように、彼女は見目の良い神官を側に侍らせていましたね」

「それで?貴女はその毒牙には掛からなかったの?」

「なんとも。彼女には利がありませんから」

「そうかしら?」

「私はいち司祭に過ぎません。それに、少々籐が経ちすぎています」


 実際、この麗しの司祭の元へあの元姫巫女が現れた事はない。好み云々以前に、この司祭のハンディキャップを知って近づかなかったと推測できる。それもその筈、元姫巫女は男好きには違いないが、それよりもずっと強い権力コネを欲していたからだ。

 この司祭は根っからの神の信徒。それだけでもう、元姫巫女の範疇になかったと云える。


「あの、司祭さまはお素敵ですよ?」

「ありがとうございます」

「あら?このに対しては素直にお答えなさるのね?」

「姫巫女の言葉には嫌味がありません」

「確かに」


 おずおずと見上げる姫巫女の頭を撫でる司祭。その仕草は恋人に対するそれではなく愛妹のそれ。


修道女シスターリアナ、貴女はもう少し肩の力を抜きなさい。それでは身が保たない」

「……何の事かしら?」


 暫く緩やかな時間が過ぎた後、司祭は空のカップを置くと口を開いた。


「姫巫女を守ろうと必死なのは解ります。ですが、貴女の行動はあまりに無鉄砲過ぎる。貴女が傷つく事を良しとしない者がいる事に、気づくべきです」

「私は国から追放された身。誰も私の心配なんて……」


 思ってもいない追撃。たじろぐ修道女はすぐに口籠った。悲しそうに眉を顰めた姫巫女の表情が視界に入った。


「私は悲しいわ。リアナが傷つくなんて」

「っ……」

「私なんかの為に傷ついて欲しくない」

「あ……貴女の為にしている事じゃありませんのよ!勘違いなさらないでくださいまし!」

「うん、それでも……」

「私には私の事情がある。指命があるの。それを果たさずに倒れるなんて、あってはならないのよ」


 強い意志。使命感。忠誠を誓う者の硬い誓い。身体から滲み出る熱い想い。それらにアーリアは何も言えなくなる。リアナには何物にも変え難い意思があり、その想いは決して挫ける事はない。そんな自分にはない強い意志を、ほんの少し羨ましくも思えてならなかった。


「リアナ……」


 目的に向かって突き進むリアナを眩しく思おうとも、彼女の身体を慮ってはならない理由にはならない。


「アナタこそ用心なさいよ?」

「え……?」

「ほら、その顔。『私には何にもないわ』みたいな顔よ。スキだらけで狙いたい放題じゃない?以前のアナタなら、そんな顔しなかったわ!」


 アーリアにはリアナの言う『以前の自分』というものが分からず押し黙る。するとリアナはしまった!という表情で唇をいちど閉じ、そしてアーリアの手を取ると目と目を合わせた。


「ほら、しゃんとなさい!」

「うん……」

「きっとそのうち思い出すわ。だからそのその時までよ。私がアナタを守るのは」


 何も言えずに押し黙る姫巫女を他所目に、司祭は見えぬ瞳を修道女へ向ける。


「では尚更、無謀な行動で身を滅ぼさぬ事です」

「忠告、痛み入りますわ」

「全く、貴女は素直じゃない」

「あら。司祭さまだって」


 コロコロ笑う修道女。全く反省を見せぬ様子に、司祭はつける薬はないとばかりに首を振った。


「司祭さま」

「なんでしょう」

「私たちは司祭さまを利用している。だから、司祭さまも私たちを利用しても構いませんのよ?」


 思わぬ提案。いや、盲目の司祭の立場を慮っての提案に、司祭はクスリと口元を緩めた。このようなアケスケな押問答が可能なのは、神殿広しといえどこの修道女しかいない。

 互いを利用し合う者同士。性質タチが良いな訳がない。マトモな精神の持ち主ならば、この様な魔窟で生き残れる訳がないのだ。


「その時が来たら、考えさせて頂きましょう」


 麗しの容姿に浮かぶ笑顔。キラキラとしたエフェクトが飛びそうな笑顔に、リアナも負けじと笑みを浮かべた。


「ほんっと、貴方ってタダの司祭プリーストには見えないわ!」

「貴女こそ。タダの修道女シスターには見えませんよ」


 暫く見つめ合った後、二人はあははうふふと笑い合う。そんな二人の様子に姫巫女は「仲良しだな」と見当違いな事を考えた。



 ーー数日後。

 


 姫巫女の下へトアル行商人の義兄弟が現れる事になる。旅の道中、大怪我を負ったという義兄弟。傷を癒すべく手を差し伸べる姫巫女。


 果たしてこれは()の手引きがあっての事か。

 誰もが想定していなかった日が、訪れようとしていた。






お読みくださり、ありがとうございます!

ブックマーク登録、感想、評価など、とても嬉しいです(*'▽'*)


『神殿の良心』をお送りしました。

魔窟と思われていた神殿にも良心が残っていました。

上層部にいく程腐敗の進む神殿に於いて、盲目の司祭は真に神の使徒として神殿の為、信者の為、延いては国の為に行動しています。司祭が姫巫女の保護に一役買っているのも、第二王子殿下から預かった少女が健やかに過ごす事こそ、国の為であると知るからです。


次話も是非ご覧ください!

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