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魔宝石物語  作者: かうる
魔女と狂気の王子(下)
379/500

悪役令嬢、奮闘す2

 

「ああ、驚愕ビックリした……」


 突然現れた高貴なお方が姫巫女を連れて室から出て行ったあと、修道女リアナは擡げていた頭をゆっくりと上げた。その顔色は見るからに青い。血の気の引いた後には苦々しい表情が浮かんだ。


「油断したわ。まさか、こんなに早くお越しになるなんて……」


 狂気の王子ーー第二王子殿下が姫巫女を神殿まで迎えに来るのは、何も今日が初めてではない。

 多忙な身である筈なのに、殿下は何くれと理由をつけては姫巫女を迎えにくるのだ。その様子はとても甲斐甲斐しく、婚約者というより保護者のようであった。

 しかし、実質的には保護と云うよりも監視に近いと、修道女には思われた。姫巫女に何事か起こらないように目を光らせ監視しているのではないかと。そこにあるのは婚約者への情恋などではなく、管理者としての責任に違いない。


「当たり前よね。あのが『姫巫女』なんて、無理があるもの」


 よりにもよって、隣国から拐ってきた姫を自国の巫女に据えようなど、どう考えても悪手でしかない。そう考えるのは、リアナだけではないだろう。

 こうしている間にも、拐われた姫を探して捜索の手は伸びている。その手はもうすぐ側まで来ているかも知れない。にも関わらず、監禁すべき対象を人目につく場所に置いておくのは何かの策略があってか。憶測が憶測を呼ぶ。


「記憶まで失っているあのを使って、何をしようというのかしら?」


 本人は否定しているが、姫巫女がシスティナの魔女姫である事は間違いない。魔女姫と相対した事のある元公爵令嬢リアナは、見間違えである線を完全否定していた。

 髪色こそ違うのだが、あのオパールのような虹色の輝きを持つ瞳ーー帝国で『精霊の瞳』と呼ばれるあの瞳を見間違える筈がない。あのような特別な瞳を持つ者など、この世に幾人といないのだからと。


「きっと、あのお方も驚いていらっしゃるに違いないわ」


 修道女シスターリアナは追放されてなお、忠誠を捧げる自国エステルの皇太子殿下を思い浮かべた。

 リアナを国外追放し隣国ライザタニアに放ったのは皇太子殿下。つまり、リアナは皇太子殿下の意思を受けてライザタニア入りを果たした。先行き不透明なライザタニア情勢を知る為の間諜スパイとして。

 自身の処遇に関して、リアナには何の不満もなかった。寧ろ罪人の身でありながら祖国エステルと帝室への忠誠を捧げる事を許された身に、感謝していた程であったのだ。


 自身の役割はライザタニア情勢を調査すること。


 そう漠然と捉えていたリアナだが、ライザタニア入りしてすぐ訪れた神殿に於いて、偶然にも皇太子殿下の意図を悟る事になる。ライザタニアに在るべきではない一人の女性を見つけてーー……


「これではシスティナも迂闊には動けないわね」


 馬鹿正直にも『自国の姫を敵国に拐わた』などと云う事実(スキャンダル)を、システィナは公表しない。できない。他国へ知られれば自国の管理体制を言及された挙句、付け入る隙を与える事にもなってしまうからだ。

 しかも、拐われたシスティナの姫は、システィナ国王夫妻の養女ながらエステル帝国皇太子の婚約者でもある。未だ婚姻関係にない姫ではあるが、それでもエステルからの信頼失墜に繋がり兼ねない。漸く停戦と相成った昨今、築き始めた信頼関係を損なう行為は犯せない。


 ーだけど、あの姫は皇太子殿下に愛されているわー


 社交界の所作もロクに知らず、エステルの伝統も格式も知らぬ田舎者。かつてはそう罵っていたリアナであったが、アリア姫との対決を経て、己がどれほど皇太子殿下の視野に入って居ないかと云う事を身に染みて理解させられた。皇太子殿下がアリア姫をどれほど大切にしているかと云うことも。


「あんなに優しく微笑まれた事など、一度もないもの……」


 皇太子殿下がアリア姫にだけに見せていた微笑みを思い出し、リアナはグッと唇の端を噛んだ。

 どんなに願ったところで一生手に入る事のないその場所。一生手に入る事のない微笑み。それを向けられた相手は、今、このライザタニアにいる。記憶を失くしただけでなく、姫巫女と担ぎ上げられ、剰え、第二王子殿下の婚約者に収まっている。


「なのに!あのお方を忘れ他国の王子オトコに縋るなんて……!許せないわ!絶対思い出させてやるんだからッ!」


 エステルにこの令嬢ありとまで言われた公爵令嬢リアナをギャフンと言わせた魔女姫。その魔女姫の不甲斐さに修道女リアナはいたくご立腹であった。『公爵令嬢を破滅エンドまで導いた魔女姫が、こんな所で何をしているのよ⁉︎』と怒りの地団駄を踏む。


「こんな場所で朽ち果てるなんて、許しませんことよ!」


 ーーアナタはそんなに弱い女じゃないでしょう?


 一度は同じ舞台で戦った相手だからこそ、リアナには相手が不様な敗北を迎える事に耐えられなかった。況して勝手に舞台から降りる事など、到底許せる事ではなかった。

 姫巫女とは敵同士であったが、今回ばかりは共に手を取る事も否まない。忠誠を誓う皇太子殿下の為ならば、くだらないプライドなど捨ててしまおう。あの方の願いを叶える為なら恋敵であっても協力は惜しまない。何としてでも姫巫女に記憶を取り戻させ、自国の皇子の下へお渡しせねばならない……!


「いけないいけない」


 そう誓うリアナは暑くなり過ぎている自身を叱責。


「とりあえずは保身を考えなくちゃね。こんな所で死んでは何にもならないわ」


 リアナはグッと拳を握り込み、自身に言い聞かせるように顎を下げる。己は崇高な使命を帯びた身。志半ばで倒れる事はあってはならない。先ほどのように話に熱心になり過ぎて背後に現れた人の気配を感じ取れないなど、致命的なミスだと言わざるを得ない。


 ーそれにしても、どこまで聞かれてしまったかしら?ー


 ブルリと寒気を感じ、リアナは身体を抱き込むように両腕を摩った。あの獣のような視線がリアナの全身に突き刺さったまま、なかなか抜けそうになかった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ※(シュバルツェ殿下視点)



 ーあの修道女おんな、何者だ?ー


 王宮への道中、豪奢な馬車内で姫巫女つきの修道女を思い出すなり、不穏な策略ばかりを思い浮かべていた。暗殺、謀殺、密殺など、不要な者を始末する手段ばかりをだ。

 修道女が姫巫女の正体を知っているのではないか。

 そう思い至った側から、修道女を始末する算段をするのだから、他者の云う『狂気の王子』というのは強ち外れていないのだろう。


 ー確か、出自は帝国であったか?ー


 姫巫女のお付きの者たちの情報は全て手の内ある。

 前姫巫女が『不慮の死』を遂げて後担ぎ上げられた現姫巫女は、私にとって『特別な女』だ。その特別な姫巫女の周囲に侍る者には、特段の注意を払っている。

 あの修道女ーーリアナとかいう女の出自は帝国であり、帝国にあってはルスティル公爵家の令嬢であったと記憶している。それが先ほど、皇太子の妃争いにて不逞を働き、断罪を受け、我が国へ流されてきた。そしてルスティアナ侯爵家と縁続きである事から、地方の教会ではなく神殿預かりとなった。

 まぁ、贅沢しか知らぬ元公爵令嬢が地方で田舎暮らしなど出来る筈もない。平民の暮らしという物に疎いのだ。野垂れ死なれるのも寝覚が悪いと考えるのも、十分理解できる。

 だが、新米修道女でありながら平職員ではなく姫巫女つきとは、よっぽどあの女は優秀なのだろう。強力なコネがあったとしても、周囲を黙らせるだけの実力がなければ務められない。さすが、帝国の元公爵令嬢と云う所か。


 ー案外、間諜スパイかも知れぬな?ー


 帝国から追放された女。皇太子妃の座を狙っていた元公爵令嬢。この時期に国外追放されてきた理由も『ライザタニアの国内情勢を調査させる為だ』と聞けば、納得できるというもの。何せ、彼の国の皇太子は我が国にシスティナの魔女が誘拐された事を知っている。それどころか、あの皇太子の指揮官、北西の国境で飛竜による軍事訓練をしているという報告すらあるのだ。容赦がないとは思うが、我が国の傲慢さを鑑みれば、納得できる判断だと言わざるを得ない。


 ーこれでも手加減されている方ではあるがなー


 まだ手加減されていると見て良い。帝国が本気を出せば、今頃我が国は地図上から消えている。焦土と化しているだろう。

 真実、帝国は『大陸の覇者』の名に相応しい軍事力を備えている。軍事力を支えるだけの国土と財力をも有しているのだ。

 確かに、我が国ライザタニアも国土だけなら帝国に並び得るだろう。我が国には『亜人』という種もあり、暴力面では引けを取らない。だが、いかんせん軍事力を支え得るだけの財力は乏しい。つまるところ、持久力がないのだ。

 もし帝国を相手に戦争ともなれば、持久力の劣るライザタニアの方が敗れるは必至。だからこそ、戦狂いである現王であっても帝国には手を出さなかった。


 ー皇太子からは書簡も送られてきているー


『我が花、手折る事無かれ』のみ記した実に簡素な書簡。要するに『ライザタニアがシスティナより拉致した魔女姫の身が傷つくような事があらば、魔女姫の生死を問わず、帝国はライザタニアを敵国と見做し、侵攻を開始する』という脅しの書だ。これは軍務省長官とも見解が一致した。


「我が花、か……」


 あの帝国皇太子が執着を見せた女。それがシスティナに於いて『東の塔の魔女』と呼ばれる女魔導士。今、その魔女は我が手中にある。

 

 ー帝国皇太子が執着する程の女だとは思えんのだが?ー


 趣味でも変わったのだろうかと邪推する。

 確かに美しい娘だとは思うが、絶世の美女でも傾国の美女でもない。あの年齢で高位魔導士である事から才女ではあるのだろうが、威厳のなさがそれを打ち消している。黙っていれば良家の娘、深層の姫にも見えるだろう。しかし、あの鈍さとお人好しさは致命的ではなかろうか。


 ーだが、あの瞳は美しいな……ー


 虹色宝石オパールの瞳は感情を受けて魔力を帯び、緋く炎えあがるのだ。ゆらゆらと揺らめく炎のような煌めき。あの瞳でジッと見つめられたならば、心の奥底まで覗かれてしまうような錯覚にも囚われる。神秘眼とも呼べる精霊眼を前では、虚偽虚勢は無意味にも思えた。


 ーあの女は目を逸らさないー


 狂気の王子たる私からの視線に臆した事はない。どのような言葉をかけられようと、ただただジッと見上げてくる。そう、あの時も……



「暇人ですか?」

「は……?」

「アナタの事ですよ、殿下」


 私の顔をジッと見据えてくる魔女。私は一瞬『誰に物を言っているのか』と首を傾げた。暇とは無縁の生活をしている私に向かって暇人とは、どういう考えで物を言っているのかと。


「我が暇人とは、どう云う意味だ?」


 すると、魔女はハァと溜息を一つ。読みかけの本をテーブルへ置くと顔を上げた。


「そのままの意味です。いちいち捕虜を構いに帰ってくる王子ひとが何処にいます?お忙しいのでしょう?」

「ああ。くそ忙しい」

「なら……」

「どこぞの魔女に言われたのでな?『部下に仕事を任せるのも、上に立つ者の役割だ』と……」


 それどころか、魔女からは『上に立つ者がセコセコと働いていては、下の者が侮りますよ?』、『部下の育成も指導者の仕事では?』などと、偉そうにものを言われた記憶すらあった。

 確かに私は他者に仕事を振るのを得意としてはいない。他者に任せるよりも自身でしてしまった方が早いと考えてしまうからだ。だが、それでは指導者として余りにも器が小さいというもの。指導者たるもの余裕を持ち、ドンと構えていなければならない。

 真実であってもそれを側近ではなく他国の魔女に指摘されたとなれば立つ背がなく、情けない気持ちにもされた。


「なんだ、その表情かおは……?」

「いいえ、何でもございません」

「ほう、そうか。何でもない様に見えんが」


 何か言いたげに、だが、何とも言えない表情で見上げてくる魔女。


 ーああ、まただ……ー


 膨らませていた頬が萎み、目の前でスッと目線を逸らす魔女の横顔。何かに縋るようで、何もかもを諦めたような目をしている。死と生が混濁する目を。

 生きている事への罪悪感と死ねぬ事への羞恥心。死を望む心と生を望む心とか常に混在している。その矛盾と向き合いながら過ごす日々は、確実に魔女の精神を疲弊させている。

 それでも魔女は常に気丈な態度を取り続けてはいた。その気丈さは一体どこから来ているのかと考えれば、それはただ一つ、『自身の言動故に祖国に残してきた者たちが侮られぬ為』に違いない。


「殿下は、何を考えているの?」


 ふと意識を戻せば、晒された筈の目線が私の方へ向けられていた。「何をとは?」と問えば、「本当は私なんかに興味はないでしょう?」と返してくる。


「そんな事はない。現にこうして其方を相手にしているではないか」


 わざとらしく微笑み魔女の手を取ってやれば、魔女は嫌そうに顔を顰めた。

 この様な態度を取るのは、ライザタニア広しとは云えこの者だけ。だが、作り笑いとも分からず頬を染めて媚を売る令嬢むすめたちよりもずっと良い。物怖じせず、己が意見を述べる魔女の態度は凛として美しく、他の令嬢よりもずっと興味を惹かれた。

 一国の王子からの評価など何の意味もないとばかりに、当の魔女はパッと手を振り解き、溜息混じりに言葉を零した。


「ウソ。死んでは困るから見張ってるダケ。それ以上の関心なんてない。そうでしょう?」


 離された手。冷たい指先が掌を掠める。


「だって、殿下からは性的な危険を感じた事がないもの」


 そんな事はないとは、正直答えられなかった。何故なら、真実、私がこの魔女を『女』として見た事がなかったからだ。

 魔女を『大切な捕虜』として扱っている。『か弱い女性』として紳士的に扱っているつもりもある。『拾ってきた野良猫』程度の愛着も持っている。ーーが、私が魔女に対して持つ感情は情恋ではない。私は魔女を『性的対象』として求める事はない。


「なんだ、求めて欲しかったのか?」

「とんでもない!結構です」


 顔を真っ赤にして首を振る魔女。男の私から見ても女心が薄そうに見える魔女だが、この掛け合いの意味は理解できたようだ。


「ならば良いではないか」

「良くないです!殿下、いい加減寝所を別々にしましょうよ?」


 なんだその事か。無意識に眉の間にシワが寄る。心底面倒そうに魔女に視線を投げかけ、そして、面倒な話になる予感に身を翻そうとした時、私の前に魔女が立ちはだかった。


「変な噂が立ってからでは遅いですよ!ね?ね?殿下も困るでしょう⁉︎」


 必死の形相で見上げてくる魔女。


「バカか。我は噂になど左右されん」

「可愛いお嫁さんが来てくれなくなっちゃいますよ?」

「ハッ、噂の真偽も分からぬ輩など必要ない」

「ぐぬぬっ……!」


 掴まれた腕に入る力が緩んだ。見れば、魔女は「確かに」と言って俯いていた。何か妙案が浮かばぬものかと思案しているのだろう。

 初手で否定の声が出てこないのは、魔女が無能ではないからだ。優劣もそうだが、好き嫌いで物事を判断せず客観的に物事を見る事は、なかなかに難しい。それが出来る魔女の瞬間的判断力には都度驚かされる。


「構わぬではないか。困る事もあるまい」

「私は困ってます!」

「ハハハ!」

「すぐ笑って誤魔化す……」


 ポカポカと前足を振り回す魔女の頭をポンポンと叩く。頬を膨らませて抗議する姿にほっと心を撫で下ろしたのは、魔女の精神が未だ健全さを失っていないと感じたからだろう。だがーー……


 

 あれからほんの数日後、魔女は自身に関する記憶を失った。



「殿下?花がどうされました?」

「いや、何でもない」


 心配そうに覗き込む瞳が、ゆらゆらと七色の輝きを放っている。あの時とまるで同じ色を持っているのに、内包している力はとても弱々しく感じられた。


「そうです、か……キャッ!」

「おっと……」


 車輪が石でも踏んだのだろう。ガタンと馬車が揺れ魔女の身体が傾いだ。傾ぐ肩に手をかけ、此方へと引き寄せる。羽のように軽い身体に、思わずドキリと胸が鳴る。


「……お前を神殿の巫女などに添えなければ良かったな」


 そのまま胸中へ抱き込むと、魔女の頭の上に頬を寄せた。

 僅かに身動いだ魔女に「気にするな。ただの独り言だ」と言葉を掛ける。

 だが、この独り言はとぐろを巻く蛇の様に、私の胸の中にひとつの闇を落とした。


 ーリヒャルトの提案などに乗ったのが、間違いだったのではなかろうか……?ー


 王家との血の繋がり、初代姫巫女から続く血の継承こそないものの、『美しい白髪』や『癒しの秘術』などは姫巫女と通ずるものがあり、最低条件を満たしている。魔女の容姿、そして魔術、性格を含めれば、あの似非エセ姫巫女よりもずっと『姫巫女』というブランドイメージに相応しい。

 記憶を失った魔女を前に困惑を隠せずにいたあの日あの時、信頼する側近リヒャルトの言葉に迂闊にも頷いてしまった自身の迂闊さを、今頃になって呪いたい気分になる。

 きっとあの痴女に飲まされた酒の所為に違いない。でなければ、他国から攫ってきた魔女を姫巫女と挿げ替えよう等という愚かな策に、許可を下ろしたりはすまい。


「あの、大丈夫ですか?」

「何がだ?」

「ご気分が優れないのでは?その、顔色が優れないように見えたので……」


 その言葉に、記憶のない魔女の前にも関わらず深い溜息が漏れ出ていた。どうやら私は、随分とこの魔女の前では気を許せる様になっていたのだな。


「平気だ。心配かけてすまないな」

「いいえ。あの、ご自愛なさってくださいね?」


 淡く微笑む魔女に微笑み返す。そっと頭を撫でれば、魔女は乙女のように頬をほんのり染めた。その姿に得体も知れぬ感情が己を内外から湧き出す。これは罪悪感、それとも背徳感だろうか……?


 ーやはり、これは本来の姿ではないなー


 なんと空々しい気分であろうか。そう思うのは贅沢なのだろうな。この様に体調を心配され優しく微笑まれるよりも、罵りながらキッと強く睨みつけてくる魔女の表情の方が好みなどとは、本人には勿論、リヒャルトの前でも言えん。


 だが、失われた時間は戻ってはこない。


 これは私が望んだ未来。だからこそ後悔などしてはならない。私が国の為に犠牲になった者たちの為に、そして、故郷から離され記憶まで失くした魔女の為にも、私は最後まで信念を貫き走り抜かねばならない。例え、行先に暗雲が立ち込めていようともーー……




お読みくださり、ありがとうございます!

ブックマーク登録、感想、評価、いいね!など、ありがとうございます(*'▽'*)


『悪役令嬢、奮闘す2』をお送りしました。

独り言が多いリアナ。ついうっかり他に声が漏れないように、魔法を駆使して部屋を遮断しています。室内に入らない限り、はっきり声は聞こえません。

そして、狂気の王子の独白。

シュバルツェ殿下は魔女を宮に迎えた直後こそ面倒に思っていましたが、相対する内、何の忖度なく気兼ねなく相手できる魔女の存在に、少なからず心許していた模様です。


次話も是非ご覧ください!

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