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魔宝石物語  作者: かうる
魔女と狂気の王子(上)
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創られた予言2

 夜会は春の美しい華々が咲き誇る庭園を臨む大ホールで行われていた。『神殿』が管理する施設の一つだ。窓越しに大神殿の屋根を臨むホールには現在、着飾った男女が集う花園と化している。酒を呑み、肉を食み、踊り、語らう。甘ったるい香水の匂いが入り交じるホールはまるで酒池肉林。神に遣える神官たちが貴族に入り交じるホール内には僅かな不自然ささえある。背徳的な雰囲気が人々の感覚を酔わせているのかも知れない。


「どうですか?殿下。花園の中にお気に召す華はございましたかな?」


 枢機卿アーレンバッハは歩く度にでっぷりとした腹を揺らした。赤子のように太い手首が白いローブから飛び出している。三段腹は長衣を羽織っていてさえ目につく始末。肉つきの良いソーセージのような太短い指が小器用にワイングラスを掴み、まるで水を飲むように喉に流し込んでいく。


 ーまるで豚のようだなー


 シュバルツェ殿下は顔色こそ変えぬものの、内心、アーレンバッハ枢機卿の脂ぎった匂いに鼻をしかめていた。

 神殿に於ける法皇を国王が兼任するライザタニアに於いて、その次点、アーレンバッハ枢機卿は公爵位を持つ貴族という立場をも有する。現在の巫女殿下の父親という立場も、アーレンバッハ公爵を枢機卿へと押し上げた由縁であった。公爵家という最高位の貴族位もこれに拍車をかけ、今や神殿の実権を掌握しているのはこの男である事は言うまでもない。

 それに比べ、アーレンバッハ枢機卿の背後で媚びへつらうように張り付く男ーー大司教の地位にあるルスティアナ侯爵の態度たるや、まだ可愛い部類に入る。大司教ルスティアナとは、これ程分かりやすい腐敗神官も珍しいと云わんばかりの男。己より高い権力を持つ者に阿諛あゆして利益のおこぼれを貰うというやり口を得意としているが、その実、虎視眈々とアーレンバッハ公爵の背後を狙っている実に模範的な逆臣なのだ。その為だけにアーレンバッハ公爵家に末娘を嫁がせ縁戚となり、その権威の一部を我が物にせんと画策するルスティアナ侯爵には、第二王子殿下も呆れを通り越して感心する時すらあるという。


「残念だが、貴殿のご期待には添えぬ。我は今、ただ一人の女に囚われておるのでな」

「それはそれは……殿下の御心を射止めたと言うのはまさか……?」


 フフンと鼻を鳴らす第二王子殿下の横顔。その表情は傲慢で高圧的だ。しかし、その抗いようのない魅力な何であろうか。アーレンバッハ枢機卿は迫力に飲まれたかのようにウッと息を飲むと、ギラついた目を怪しく輝かせ、金歯の光る口から「魔女姫ですかな?」と声を絞り出した。しかし、第二王子殿下はその問いに答える事はなく顔をツイと逸らしたのみ。そのそっけない態度に知らず、アーレンバッハ枢機卿は歯牙していた。

 第二王子殿下がシスティナの『東の搭』と呼ばれる軍事要塞から一人の魔女を拐わせて来させた事は、今や、ライザタニア貴族たち皆が知るところになっている。魔女はライザタニアがシスティナに侵攻する上で第一の障害とまで目されており、魔女の守護する『東の搭』はライザタニア軍部より『堕とせぬ搭』とまで云わしめている。

 だが事態は思わぬ進展を遂げた。およそ二月前、姫巫女に神託ーー予言が下った事によって、事態は急展開したのだ。


 ー星は落ち 月は満ちたー

 ー月の尖兵は彼の地を目指すー

 ー天を穿つ塔は闇夜に崩れ落つるー


 予言が成就していたならば『天を穿つ搭』ーー『東の搭』は、ライザタニアより放たれた特殊部隊によって堕ちる予定だった。予定とは未定であると同義であり、現実は小説より奇なりとはよく言ったもの。現在に至り『東の搭』は堕ちる事なく、今尚、システィナの国境を守護し続けている。この事態はアーレンバッハ枢機卿にとって『予定にない事実』であった。

だからこそ、アーレンバッハ枢機卿は憎々しげに奥歯を鳴らす。「それもこれもこの狂王子が……!」と。

 本来ならば、アーレンバッハ枢機卿の放った小飼の部隊が秘密裏にシスティナへと侵入し、『東の搭』と『搭の魔女』の双方を堕とす予定にあった。それこそが『予言の成就』であったのだ。

 しかし、実際にライザタニアへ侵入を果たのは王家直属の特殊部隊『月影』。そして、堕ちる筈の搭は堕とせず、その代わりとばかりに部隊は魔女を第二王子殿下の下へ連れ帰った。それがどれ程アーレンバッハ枢機卿の予定を狂わせた事だろうか。


 ー痴れ者め!何が予言か⁉︎ー


 神より託される予言など存在しない。ただの創られた空想ーー虚言。そう知る者からすれば、アーレンバッハ枢機卿こそが神の冒涜者。何故なら、現在神殿の姫巫女より下される『予言』の全てを、この男アーレンバッハ枢機卿が都合良く創り上げているだから。

 というのも、もう随分前から『姫巫女による託宣』は機能していなかった。真に託宣の力を有していた賢王の妹姫から代を経て姫巫女の力は衰えを見せ、とうとう現代では神力の顕現がなくなっていたのだ。

 神殿の権威の失墜を危惧した者たちは、その事実を隠蔽してきた。神殿は『王家の合せ鏡』とも云われる立場と権限を喪う事を恐れたのだ。

 王家でないにも関わらず、王族のような振る舞いを許されてきたのは、全て、神の声をその身に降ろす事のできる姫巫女が神殿の長を務めていたがゆえ。だからこそ、王家が『姫巫女に神力が備わていない』との事実を知れば、姫巫女はーー神殿はその権威を取り上げられるは必至。全ての権力を奪取されるは免れるかも知れないが、これまでのような贅を尽くした生活は出来ないに違いない。

 恩恵にズブズブに浸かり当然のように甘受してきた者たちにとって、権威をーー恩恵を喪う事は何よりも耐え難い事であった。


『神殿の権威を失墜させるワケにはいかんのだ!』


 以上が、アーレンバッハ枢機卿が『姫巫女の予言』に固執し、捏造する所以ゆえんである。彼は自身の権威を維持するが為に姫巫女をーー自身の娘を姫巫女に仕立て上げ、操作し、予言を創作し続けてきた。そう、この瞬間もーー……。


 だが、王家は神殿の隠された真実を、アーレンバッハ枢機卿の思惑を、随分と以前より掴んでいた。王家は真相を知ってなお放置してきたに過ぎなかった。


 ライザタニアはエステル帝国ほどの宗教色はないにしろ、帝国から輸入された精霊信仰をはじめ、様々な宗教が乱立している。その中でも生神ーー姫巫女の住まう神殿は、国民からの支持を最も集めていた。

 国民の求心力こそ王家に次ぐ神殿。その神殿から権力を取り上げる事は国を纏める上では愚行であり、神殿の権力をそのままに王家へと協力させる方が有益だと判断した。だからこそ、これまで神殿はその細い息の根を止められずに来られた。所謂、政治的配慮と裏事情というやつだ。


 ー神力のみを示さずともよいー


 姫巫女は象徴。永劫の平和。慈悲と慈愛。王家は富を、神殿は愛を国民に提供する。これこそが、ライザタニアが国として興って以来、王家と神殿とが担ってきた役割。

 勿論、次期王家を背負う第二王子殿下も神殿の事情に通じていた。それどころか、シュバルツェ殿下は姫巫女には神力など無くともよいとも考えていたのだ。姫巫女は国民の慈母であればよい。王家が国民全てに手を差し伸べられぬ分、助けを求めて神殿を訪れる民を救えば釣り合いがとれるではないかと。


 ーだが、これではもうダメだなー


 腐敗と混沌の匂い。神殿から匂う腐臭は、例え重い蓋をしていたとしても隠しようの無いほどの悪臭を放っている。目を瞑って見過ごすには、神殿の腐敗は度を過ぎていた。根まで腐っては蘇りようがなく、土を掘り返して新しい芽を植える他に手段はない。


「嗚呼、今宵の月も美しいな……」


 ふと、シュバルツェ殿下はガラス窓から中天からこぼれ落ちそうになっている大きな月を見上げた。月には白い薄雲がかかっている。柔らかな月明かりを受けた薄雲は彼の魔女の髪を思い起こさせ、似合わぬ哀愁に囚われた。『あの月が溶けたような髪はなんと清純な色であろうか』とーー


 ーらしくもないー


 脳裏に浮かんだ魔女の顔を失笑と共に消し去ると、今度は月の落ちる先ーー黄金に輝く神殿の屋根に視線を定めた。

 王都の中央に聳える王城にも程近く、まるでシンメトリーのように建てられた神殿を『二つ目の王城』と呼ぶ者もいる。現に、神殿は王家に次ぐ権威と権利を神殿は有しており、信徒の数だけ見れば、その支持者は王家よりも多いようにも見える。同じ国に二つの王家があるような錯覚さえ覚えるのは何も平民だけではない。貴族が覚える感覚は平民のそれより強く、神殿に属する司祭・神官たちが富と権力にまみれた生活を送るのは、致し方ない現象であるようにも思えた。


「だが、それも終いだ」

「は?いま何と……?」

「いや、気にするな。それよりも枢機卿、今宵の主役は我ではなく姫巫女であろう?神より神託が齎され、予言が成されたのだからな」

「御意にございます」


 胸に手をあて恭しくこうべを垂れるアーレンバッハ枢機卿。その余りに下手な演技にーー忠義の無さに王子は目を細めれば、視線の先にライハーン将軍の大きな体躯と鳶色の髪が映り込んだ。炎のように赤い鳶色スカーレット。その髪と同じ炎の瞳が此方を見定めている。


「ー星墜つる 二つの綺羅星ー

 ー月出でる 顕現せし明星ー」


 不意に予言の内容を口ずさむ第二王子殿下。アーレンバッハ枢機卿は『何を唐突に?』と言わんばかりに押し黙り、殿下の涼やかな横顔に視線を留めた。ーーすると、あの冷徹な第二王子殿下の顔にうっすらと笑みが浮かんだのだ。

 ゾッとするほど冷たい微笑。思わず背筋に冷たい汗をはしらせたアーレンバッハ枢機卿は、表情を彫刻のように強張らせた。


「『星墜つる』とは、なんとも不穏だな?枢機卿」

「さ、作用でございますね……」

「『二つの綺羅星』とは、果たして『何』を指しているのか……公爵には見当がついていよう?」


 もたらされる視線は氷の刃。鋭利な切先はアーレンバッハ枢機卿の胸に容易に突き刺さる。アーレンバッハ公爵は自らの持つ枢機卿の立場から『予言』に対して無知ではいられない。数多の司祭と神官を束ねる枢機卿には、姫巫女が齎した神託を解析するという仕事があるのだから。にも拘らず、不覚にも言い淀んでしまった枢機卿は、自身の無様な態度に口端を噛んだ。


「まさか、我と兄上……我が国の王子を指しているのではあるまいな?」

「それはまだ何とも……。神のお言葉を解釈するのは至難でありまして……」


 ならば何故このような夜会を開いたのか?ーーそう思わざるを得ない大司教の歯切れの悪い返答。問いかけたシュバルツェ殿下の目元が一瞬細められた。

 『姫巫女の予言』とは『神の言葉』と同義。神託。託宣。予言。様々な言い表し方があるが、要は『予定された未来』なのだ。

 神のみぞ知る未来を姫巫女は神の目を通じて断片を覗き見る能力を持つ。だからこそ、王家に次いだ権力と『巫女殿下』などといった敬称すら与えられる。

 神殿に遣える信徒ーー司祭・神官たちは姫巫女の補佐を務める者たち。日夜、姫巫女を補佐サポートし、齎された予言を解読、人間ヒトが理解できるように解釈を行い注釈を入れる。そして、これから訪れるであろう『予定された未来』を迎える為の準備をーー対策を考案し、王家に進言するのだ。

 このように夜遊会を開くならば、齎された予言に対する解釈も終わり、王家への進言が出来上がっていると見ても差し支えないはず。にも拘らず、未だ枢機卿アーレンバッハから明確な答えはない。それどころか何の解読も解釈も対策も、『何もしていない』とはどういう事なのか。


「まさか、貴殿は我らライザタニア王族が地に墜つる事態ことを望んでいるのか?」

「とんでもございません!」


 明確な言葉を避け続けるアーレンバッハ枢機卿であったが、シュバルツェ殿下からの確信を突いた問いにまさか『そうです』と答えられる筈もない。この場で反逆者のレッテルを貼られてしまう。眼前にあるは狂気の王子と名高い第二王子殿下。これまで『気に食わぬから』との理由だけで、幾人もの公爵の子飼いが粛清されてきた事実がある。なればこそ、このような場で尻尾を出すは悪手でしかない。

 声を荒げたアーレンバッハ枢機卿の叫び声は良く通り、会場内に小さな騒めきが起こる。元より第二王子殿下の動向に注視していた貴族は勿論、その他の貴族たちの視線も一斉に集まった。

 慌てたのはアーレンバッハ枢機卿だけでなく、背後に控えていたルスティアナ大司教も同じだった。ルスティアナ大司教は給仕に指示して客たちにワインを配らせ、管弦楽者たちに指示して楽曲を換えさせた。すると、暫くして会場内にはテンポのよいワルツが流れ始め、ざわめきも収まりを見せ始めた。


「でだ。大司教、貴殿の神官としての解釈はどうなのだ?」

「これはライハーン将軍。貴殿が夜会参加とは、お珍しいですね」

「俺はまどろっこしい夜会は苦手でな。だが、仕事とあっちゃそうも言ってられねぇ」

「では……?」

「今宵は殿下のお守りさ」

「ああ、護衛でございましたか?」

「まーな。軍服で夜会参加も珍しかねぇだろ?」


 ざわめきがやや収まりを見せた頃、最初に声を上げたのはシュバルツェ殿下でもアーレンバッハ枢機卿でもなく、ライハーン将軍であった。ライハーン将軍はアーレンバッハ枢機卿の後ろに金魚のフンよろしくついているルスティアナ大司教に狙いを定めると、挨拶もそこそこに本題に切りかかった。


「貴殿も神官の一人。それどころか、司祭を束ねる大司教サマだ。勿論、姫巫女の予言を解釈する会議には参加しておいでだろう?」

「え、ええ」

「なら聞かせろや。貴殿らが考えた解釈とやらを」


 肉食獣を思わせる鳶色の瞳がギラリと動く。夜会用の煌びやかな軍服を身に纏っていようがその屈強な体躯は隠しようがなく、全身から放たれる威圧感にルスティアナ大司教は押さていた。爵位こそ同一である二人だが、一方は軍人、一方は神官。普より剣を握り、汗と血に塗れた戦場を往くラオハーン将軍と、ぬるま湯のごとき空間に身を浸しているルスティアナ大司教とでは、その有り様がまるで違う。睨まれた野兎のようにいすくんだルスティアナ大司教は、降り注ぐ威圧感に言い様のないストレスを感じるは当然のことであった。


「まさか答えられねぇ訳がねぇわな?こんな盛大な夜会まで開いておきながら、解釈も対策もナイなんてオカシイだろう?子どもの遊びじゃねぇんだ。姫巫女の予言には我が国の未来がかかってやがる。『バカ騒ぎしてハイしまい』なんてバカなこたぁないと思いてぇな」


 ライハーン将軍の言った言葉は、マトモな貴族ものならば誰でも考える事だった。宗教に夢を見ていない政治家にとって、姫巫女の予言など災悪でしかない。それは、これまでもたらされた予言ーー『予定された未来』の殆どが『素晴らしい未来』であった試しがないからだ。或いは大洪水の予兆であったり、或いは農業不作の予兆であったり、或いは疫病の予兆であったりと、そのどれもが厄災の類。脆弱な人間たちはその厄災を回避するべく、知恵を巡らせる必要があった。


「厄災回避の為にてめぇら神官どもがいるんじゃねぇのか?」

「く……口を慎みたまえ、将軍」


 ルスティアナ大司教は奥歯を噛み締めると、凄むライハーン将軍を真正面から見据えた。すると将軍は嬉しそうに口角を上げる。その表情カオには『喧嘩上等』と書かれている。根っからの喧嘩好きライハーン将軍からすれば、睨まれて大人しく引っ込む敵よりと牙を剥いて立ち向かってくる敵の方が断然好ましく感じるのだ。豚肉の背に隠れ甘い蜜を啜るルスティアナ大司教をライハーン将軍は勝手にヘタレ認定していたのだが、この時、その評価を僅かに改めた。


「やっと話す気になったか?」

「いいえ、貴方に話す事などございませんよ」

「なにぃ⁉︎」


 ルスティアナ大司教はアーレンバッハ枢機卿の巨体から一歩前へ踏み出すと、真っ直ぐにライハーン将軍へと向き直った。真白の司祭服を翻す大司教。そこには先ほどまでのヘタレた雰囲気はない。


「予言は受け取り方によって凶にも吉にもなります。だからこそ、幾人もの司祭と神官たちが集まり議論に議論を重ねるのです。勿論、議論には国内情勢や気候変動などを考慮します。未来に起こるであろう事態なれば、予言に対応できるよう、我々は真剣に話し合うのです」


 ルスティアナ大司教の咄嗟の半減にライハーン将軍は「ほう?」と目を細めた。すると将軍が口を開くより前に、軽やかな笑い声が二人の耳に届いた。


「アハハハハ!そうか、そうだな。未だ、貴殿らにも神官としての矜持は残っていたのだな」


 ワイングラスを片手に腹を抱えて嗤う狂気の王子、第二王子シュバルツェ殿下。その様子にアーレンバッハ枢機卿はじめ他の司祭・神官たちの顔色が変わる。その誰もが楽しげな笑い声をあげる殿下に対し、怪訝さを隠し切れずにいる。中には王子の中の狂気が目覚めたのかと恐れを抱く者さえいた。

 だが、その危機意識は確かなモノであった。笑いを納め、サッと顔を上げた第二王子殿下の口元にはこれまで誰も見たことがないような微笑が浮かんでいたのだ。


「ならば、貴殿ら神殿の意見を聞こうか。議論を重ね見出した対策とやらを」


 狂気の笑みを浮かべたシュバルツェ殿下。その壮絶な微笑に見惚れーーいや、硬直した者たちの中で、一番早くに呪縛が解かれたのは、なんとアーレンバッハ枢機卿だった。


「それにつきましては殿下、神託についてはわたくしどもよりもずっと詳しい者がおります」

「貴殿らよりも詳しい者?」

「はい。ですから殿下、その者の口から直接神託についてお聞きになってはどうですかな?」


 そう言ってアーレンバッハ枢機卿は笑んだ。その目に溝川どぶがわのような暗い闇を写してーー……



お読み頂きまして、ありがとうございます!

ブックマーク登録、感想、評価など、とっても嬉しいです♪ありがとうございます(*'▽'*)/


『創られた予言2』をお送りしました。

狐と狸の化かし合いスタート!しかし、早くも準備不足の神殿側が劣勢に立たされています。


【裏話】

ライハーン将軍着用の軍服は儀式祝典用にゴテゴテと装飾が施された特注品です。式典以外で将軍から好んで着用する事はありませんが、「どこで運命の出会いがあるとも知れませんから!」という専属侍従の圧により、渋々着飾られています。髪もバッチリセットされていて窮屈を感じている将軍。すぐにでも掻きむしりたい気持ちを酒を飲む事で堪えています。


次話も是非ご覧ください!

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