※裏舞台9※気炎万丈
欲しければ奪う。これは遊牧民族に於ける常識。略奪は文化。そう、前時代まではーー……
ライザタニア西方にある隣国システィナとほど近い山間の村。かつてそこには国境線上にある山々から鉱物を掘る坑夫の暮らす集落であったが、およそ三十年前に起きた領主交代を機に鉱山採掘もおざなりになり、今ではもう貧しい木こりたちの集まりとなっていた。
運良く奴隷落ちを免れ、貧しいながらも村人たちは木を切り、獣を狩り、森林を管理しながら細々と生活していたその集落は、その夜、月も中天を過ぎた夜半過ぎ、突如として現れた野獣の襲撃を受ける事になる。
ーピィィイイ……ピィィイイ……ー
何処からか響く甲高い笛の音。山間に生きる人間の習性とも云えるカンが、全身に強い生命の危機感を伝える。身体を包む異様な空気。鳥肌。異様な喉の乾き。精神を揺さぶる警戒音。それらに突き動かされ飛び起きた村人たちは、自分たちが置かれた状況を把握するまでに数分の時間を要する事になる。
「なんだ……地震か?いや、これは……」
足裏を震わす微弱な振動。地鳴り。地震か噴火か、天変地異の前触れの如く、精神は奇妙な興奮と緊張感にソワソワと落ち着きを得ない。
ード、ドドド、ド、ドド、ドドドドド……ー
心臓の鼓動か、それともーー。村人たちの予想は、甲高い悲鳴と共に裏切られ、そして、忽ちにして地獄は広がった。
「わ、ワイバーン⁉︎」
「なぜ、こんなっ……⁉︎」
ワイバーンとは竜族の亜種。知能はそれほど高くなく、妖精族の一種にありながら魔獣にも分類される獰猛な野獣だ。一般的には竜の頭、蝙蝠の翼、一対の鷲の脚、蛇の尾に、尾の先端には矢尻のようなトゲを供えた『空を飛ぶ竜』とされる。その口からは時に赤い舌が伸び炎を吐くともされ、出会い頭に人を襲う事も多く、山間に生きる者たちには脅威として認識されていた。が、そのワイバーンが数十羽、群れを為して集落の上空を旋回しているのだ。しかも、ワイバーンの眼光は鋭く、口からは唾液が滴っているではないか。
混乱から家を飛び出した者、鍬や鋸を手に応戦を試みる者、意味不明な声を上げて逃げ惑う者、この後に及んで生命よりも金品を優先する者など、村人たちの様々な様子を、空中からワイバーンは舌舐めずりをしながら観察している。肉付きの悪い子どもよりも丸々太った大人をと、完全に人間たちを餌と見なしているその様は、正に魔獣と云えよう。
「こ、こんな数、あり得るのか⁉︎」
「オイ!魔獣除けは作用してねぇのか?」
「してたらこんな事態にはなってねぇ!」
腐っても木こり。日々、肉体労働に励む男たちだ。筋力には自信はある。冷静な者の中には女子どもを家の中に残し、対策を講じようとする者たちも現れた。だが、それもこう数が多くては、対処の仕様もない。
彼方此方では、ワイバーンの攻撃を受けて悲鳴が上がり始めている。ある場所では、滑空したワイバーンは錯乱して逃げ惑う男に狙いを定めると、その横っ腹をガブリと咥え、上空へと舞い上がった。上空では獲物を捕らえたワイバーンと獲物を横取りしようとするワイバーンとで、喧騒が起きる。取り合いになった獲物としてはたまったものではなく、痛みと恐怖から、断末魔を挙げながら意識を途絶えさせた。
その様子をまざまざと見てしまったある木こりは、取るものも取らず引き返すと家屋の奥に引き込んで、硬く扉を閉ざした。この場合、一番有効な方法を知らず取ったのだ。
「怖いよぉ〜父ちゃん〜〜」
「シッ!騒ぐんじゃない。じっとしているんだ」
ワイバーンの生活圏は地上にない。山深い土地、それも岩場を好み生息している。同じく空を行く鳥のように地面を歩き、地中の虫を探すような習性はないのだ。
いくら頑丈なライザタニア人でも、人外のモノと対抗するには覚悟と準備、そして何より技能が必要だ。魔法技能然り、剣術技能然り、体術技能然り。その他何らかの技能を有してなくてはならない。
だが、ここは街外れた山間の村。少々、力に自信があろうとも、木こり風情が魔獣に対抗する術など、持たない。
ーギャァァァ……ー
ーやめてくれぇ……ー
ー火だ、火をくべろ……ー
外の喧騒を耳にしながらも必死で声を殺す子どもたち。決して広くないクローゼットで、または、地下の貯蔵庫で身を寄せ合って耐える家族たち。
その地獄のような時間が永遠とも思えた時、いつしかパタリと外の喧騒が消えた事を知った。
あれだけ煩かった物音がしない。
野獣の挙げる雄叫びも聞こえない。
悲鳴も、怒号も、一切合切が消え失せている。
「な、なに……?」
「どうなったの……?」
脅威が去ったのか、誰もがそう考えた。しかし、その小さな安堵は、ワイバーンに代わって生まれた複数の気配にかき消された。ドドドド……と腹底に響く蹄の音。複数の吐息と体臭。そして救援を伝える大声。
『皆の者、大事ないか⁉︎』
『西都兵団が駆けつけた!』
『シュロン侯爵様自ら御出馬なされたのだ!』
それらの言葉には、屋内に隠れていた者たちは歓喜を得た。西都兵団とシュロン侯爵家の名にホッと息を吐く。
「嗚呼っ!神は我々をお見捨てにはならなかった!」
およそ三十年ほど前、前代領主に代わりこの地の領主になったシュロン侯爵と云えば、何かと後ろ暗い噂の絶えない人物であったが、それでとやはり領主は領主。自領の民に危機に駆けつけるその行動力に、村人たちは感動に打ち震えた。
「領主さまっ!」
「おお、皆の者、大事ないか?」
「はいっ!」
「そうかそうか」
感動もそこそこに穴蔵から飛び出した村人たちは、馬上にあるシュロン侯爵を目に留めるや否や、胸に手を組んで膝をつき、思い思いに感謝の言葉を告げる。何故こんな国境付近の集落に、それもこんなにも都合良く、西都に住う領主一行が到着したのか、それらを冷静に考える事もなく。泣き崩れる村人たちを見た侯爵はうんうんと頷き、人の良い笑顔を集まった村人たちに向けた。
「我が到着が遅くなったばかりに、そこな者たちは本当に残念であったな」
男の亡骸に泣き縋る女を前に、領主はやや眉を顰める。
「何を仰います⁉︎ 領主様がお越しにならなければ、この村はもっと悲惨な結末を迎えたでしょう」
「そうか……」
「はいっ。領主様のおかげです!我々は貴方様の領民であった事を誇りに思います!」
「私も、私も……」と言い募る領民を前に、領主の憂いも徐々に晴れゆく。領主はうんうんと頷き、顎を撫でると、馬上から当たりを一変し、フゥと溜息を一つ落とした。
「しかし、よくぞ生き残ったものよなぁ。女子供もまだこんなに……。だが、こんなモノなのか、あの魔宝具の性能は?あれだけ高い金をふっかけられたというのに……」
「は……?ま、魔宝具……?」
「半刻も保たぬようでは、イヤハヤ」
突然、ブツブツと呟きを漏らし始めた領主に、村人たちの表情も疑問に曇る。それまでの笑顔は何だったのかと思うほど領主は如何にも不満顔で、自身の言葉に苛立ちまで覚えているようなのだ。
「まぁよい。実験は済んだ。あとは仕上げとしようか……」
太い顎を撫で扱き、したり顔で納得すると、領主の目線は地上にある村人たちに向いた。
吊り上がる眉。弧を描く唇。ギラリと光る眼光。その眼が村人たちを捕らえた。まるで、獲物を前にした魔獣のようにーー……。
「さぁ、狩の時間だ」
※※※
「金品を集めろ。抵抗する男は殺せ。女子供は商品になる。捕まえろ」
燃え盛る民家。焼け出された村人。逃げ惑う子どもたち。馬上から雄叫びをあげる兵士たち。逃げる者。追う者。血塗られた刃。血塗れの死体。地獄絵図とは正にこの事かと思える光景がそこにはあった。
「やめてぇ!」
「こ、子どもだけはっ……!」
「た、助けて……!」
悲鳴混じりの懇願。生命の叫び。しかしそれらを嘲笑うように兵士たちは嘲笑う。兵士とは名ばかりの行動はまるで山賊のそれだ。無情に振るわれる刃は、地面に額を押し付けて懇願する者の生命をいとも簡単に断った。
「何故です⁉︎ 私たちは貴方様の領民です。なのに何故、こんな非道な事を……!」
後ろ手に縛られ地面で振るえる女は、馬上にある領主を姿を信じられない目で見上げる。
「お答えください、ご領主さまっ!」
領主は不快な感情を隠しもせず、鼻息荒く息を吐き捨てる。眼下にある人間たちを見る領主の目に熱はない。無関心。無感動。まるでそこらに落ちたゴミ屑でも眺める視線に、女は絶望感から身体を震わせた。
「何故だと?お前たちは我が領民、なれば我が所有物ではないか。所有物をどうしようと構わぬだろう?」
「なっ⁉︎」
怯えた人間の表情が堪らなく良い。領主は怯える女の表情に舌舐めずりすると、兵士の行う集落蹂躙の様子をうっとりと眺めた。
「これだから止められぬわ、人間狩りは……」
略奪。前時代ならばいくらでも許された行為を、今では疎う傾向が流れている。『狂乱の王』が病床に着いて以来、王宮は第二王子殿下の手中となったが、狂気の名を引き継いだ王子は、その名に反した政策を執るようになってしまったのだ。
当初こそ、第二王子殿下を推していたシュロン侯爵であったが、これには豪を煮やした。話が違う!と憤った程だ。
それでもシュロン侯爵の治める西都は王都からも程遠く、また、荒くれ者も多い地だ。王宮からの目はライザタニアの隅々まで行き通らず、また、王都から派遣されてきた軍団はシスティナとの国境線付近に引き篭もったまま動く事もままならない。シュロン侯爵からすれば、これまで通り、王都に目をつけられぬ範囲で好き勝手するには、都合の良い状況ではあった。
折りよく、システィナの東の魔女が捕らえられた事も、侯爵の身勝手な行動に拍車をかけた。システィナは目下、ライザタニアーーいや、侯爵の仇敵だ。魔女の所為でシスティナ貴族や商人との後ろ暗い取引までおじゃんにされた侯爵からすれば、『憂さ晴らしとばかりに国境付近を荒らして何が悪い?』と本気で考えていた。
「嗚呼、良いな。この悲鳴はまさに蜜の味だ……」
極上の、それも最高級のワインに勝る美酒。
見目の良い女は愛人に、子どもは奴隷商に、男は国境へ送ろう。部下にも褒美をやらねばならないな。そうだ、抱き飽きた女を下賜しようか。それとも……などと侯爵が馬上でニヤニヤと口元を歪めていた時であった。
夜空が昼のように輝いたかと思うと、次いでパァン乾いた音が響き渡ったのだ。
「そこまでだ、武器を捨て投降しろ!」
覇気のある男の声は喧騒を切り裂いた。武器を手に無抵抗な村人を蹂躙していた兵士の手が止まる。馬上にあった領主の目も丸くなった。
「抵抗するならば此方も相応の対処を執るが、宜しいか?」
小さな蹄の音と共に現れたのは、白い軍服を纏った青年であった。
キリリと引き締まる太い眉。癖っ毛のある赤茶毛。やや垂れ目がちの瞳には、眼前で起きる惨劇に怒りを燃やしている。指揮官と思しき青年は部下たちに命じると、今もなお残虐な行為を止めぬ兵士たちを次々に拘束させていった。
しかし、頭ごなしに命じられたと感じたシュロン侯爵が、それをただ黙って受け入れる訳もなかった。幼さを残す顔立ちを目に留めるや否や、領主は歯を向いて怒り散らしたのだ。
「き……貴様、誰に対して物申すか⁉︎ まさか、儂が誰か知らぬと言う訳ではあるまいな?」
闇夜に異彩を放つ白い軍服、それは西方軍が身に纏うを許されしモノ。西方軍とは、ライザタニアにある六つの正規軍、その一つであった。
「勿論、理解しているつもりだが?」
「ならば、貴様らのこの狼藉は何だ⁉︎ 誰の許しを得ての行動かッ!我はシュロン侯爵。この地を治めし領主ぞ?なればこそ、我は今宵の野獣襲撃を察知し、脅威からこの村を守る為にわざわざ西都より参ったのだ!」
青年は馬上よりぐるりと集落の様子を見遣り、ハッと鼻息荒く嘲笑った。領主と兵士たちの行いは、どう見ても野獣の襲撃を利用した山賊のそれだ。
「我が行動は真に領民を思えばこそのものである。謂わば、これは正義の為の戦いーーそう、聖戦である」
「アハハ!云うに事欠いて聖戦とはねぇ……」
「なにを笑うか、若造」
「暴徒を為して近隣の街を襲い金品を強奪す。赤子を殺し女を凌辱す。これの何処が聖戦なのか、理解に苦しむ」
「……略奪は悪事に非ず。そんな事も知らんのか?」
「遊牧民族であったならば通じたであろう常識を今更持ち出されても困る。もしかして、貴様は未だ前時代を生きているのか?」
「なに⁉︎」
「貴様のような者を石器時代の遺物と云うんだよ」
青年は手にある長槍をクルリと回すと、その切っ先を真っ直ぐ領主へと向けた。たじろぐ侯爵の腹がタルンと揺れ、同時に馬がブルンと嘶いだ。
「生意気な小僧だ!我を何と心得る⁉︎ 我は国王陛下より任命され、この地を治める領主ぞ!」
青年の身体から発する威圧に圧倒され、落馬寸前のシュロン侯爵ではあったが、それでも抵抗する意志は折れないのは感心ものだ。傲慢な言い分といい、態度といい、これまで如何に侯爵が選民的思考に囚われ、また、それを咎められてこなかった事が窺える一幕。青年に「石器時代の遺物」と罵られて尚、言い募る侯爵には悪意のカケラも見当たらない。自身の言動こそライザタニア貴族として当然、然るべきモノだと信じて疑わないでいるのだ。その事に気付いた青年は、哀れみを持った視線を浮かべると、「これじゃ、殿下が苦労なさるのも肯けるよ」と首を振った。
「無礼者めっ!ええぃ、離せっ」
山賊に毛の生えた兵士たちなど、西方軍にかかれば一捻り。シュロン侯爵の最後の砦、護衛の兵士たちを捕らえ、残るは侯爵を、といった段階に至っても尚、無駄な抵抗を続ける侯爵に、今度は第三者の声がかけられた。
「これ以上の抵抗はオススメしませんな、侯爵」
複数の蹄の音と共に現れたのは、数台もの馬車を率いた中年の男だった。癖の様に顎の無精髭を擦りながら馬車のタラップに足を掛ける男の指には、煙草が煙る。
上背があり、匂い立つような貫禄のある男だ。腕の筋肉といい、太腿の太さといい、およそ文官には見えない。しかし、その手には武器の類はなく、ただ、口には闇夜に煙る煙草のみ。
「バ、バルカン伯爵⁉︎ なぜ、この様な処に……」
「ははは。この度、西都に左遷されましてなぁ……いやなに、この歳で妻子を残して単身赴任ですよ、あははははっ!」
「さ、左遷?」
「ええ。宰相府つきを解任にされましてな。やはり、シュバルツェ殿下に楯突いたのはマズかったですかなぁ……」
ライザタニア広しと云えど貴族社会は狭いもので、シュロン侯爵とバルカン伯爵は顔見知りだった。それも互いに第二王子殿下派閥なれば、当然のこと。
それほど親しくはなかったーー実際には、シュロン侯爵が一方的にバルカン伯爵を見下していたーーとは云え、一度は同じ釜の飯を食った同志。シュロン侯爵はバルカン伯爵へ僅かな期待の込めた瞳を向けた。
「貴殿は儂を助け、に……?」
「私は殿下より『西都を頼む』と言明されました」
「なれば、やはり私を助けに……!」
「バカを申されますな。私は殿下直々に厳命を受けたのです。その私が何故殿下の命を裏切れましょうか⁉︎」
「ヒッ!」
シュロン侯爵はバルカン伯爵からの威圧に悲鳴を挙げた。対して伯爵の方は怯える侯爵を完全無視。タバコを足下に放ると、それをグシャリと足裏で踏みつけた。
「シュロン侯爵。貴殿を拘束した後、王都へ帰参させます。ああ、領地の心配はご無用。私がキチンと管理しますゆえーー……」
その後、やはり暴れて手のつけられぬ子どもの様に抵抗したシュロン侯爵を西都軍の騎士数人がかりで、それも、武力行使をもって拘束すると、グルグルに簀巻きにされ、煩いからと轡まで嵌められてひっ捕らえられていった。
その様子を面倒そうに眺めていたバルカン伯爵が、今晩幾本目かのタバコに火をつけようとしたが、前方から近づいてきた青年に気づき、さっと居住まいを正した。
「貴殿がバルカン伯ですね?殿下からお話は伺っております。私はベルフェナール。西方軍を任されております」
「ベルフェナール将軍、やはり貴方でしたか。西方軍を動かしてくだされたのは」
「副将軍ですよ、伯爵」
「これはまた殊勝な方だな、貴方は」
差し出された青年の手を握り返す伯爵。伯爵は歳若くも西方軍副将の座にある青年に、敬意を表した。
「違法魔宝具を使って集落を襲わせ、その隙を突いて凌辱、略奪する。全く、アレはどこまでも小根の腐った貴族でしたね?」
「ははは、面目ない」
「なぜ貴殿が謝られます?」
「私もライザタニア貴族の一員だからですよ」
バルカン伯爵の悔しそうな表情に青年ーーベルフェナール副将軍は黙り込む。
「アレがああなったのも、元を正せば、ライザタニアがこれまで積み上げた歴史の所為。病人なのですよ、彼は。選民意識という名の病気に侵された」
「……そうですね。そして、その病気に侵された者は決して少なくない」
無言で頷くバルカン伯爵。西方軍がシュロン侯爵の連れた残党を狩る傍ら、バルカン伯爵の連れてきた医療班が傷を負った村人に治療を施していくのを眺めながら、伯爵は自国の置かれた状況に頭を悩ませた。
「……ですが、ようやく風向きが変わります」
遠慮がちに、しかし、明確な意志を持つ声に、バルカン伯爵はハッと顔を上げた。馬上にあるベルフェナール副将軍の顔には自信が満ちていた。
「殿下が、変えてくださる。この国を、この国の未来を……!」
「ええ、そうですな。その為にこそ、私は此処へ参ったのですから……」
西都から更に西に行けば隣国システィナへと通ずる国境があり、そこではライザタニア軍とシスティナ軍とが攻防が日常的に繰り返されている。しかし、どの攻撃も見えぬ壁に阻まれて被害らしい被害はないという。だからこそ、未だ戦争状態には発展していないのだ。その奇跡的な状況を作り出した者たちの努力。それらを無にしては、ならない。
「共に変えましょう!伯爵」
山際から登る朝日を浴びて力強く、そして和かに笑う若者の笑顔と威勢の良い言葉とに、バルカン伯爵はライザタニアの未来が明るい事を知った。まさに気炎万丈であるとーー……
長らく空白だった西方軍将軍の座にベルフェナールが就く事になるのは、それから間もなくの事だった。
お読み頂きまして、ありがとうございます!
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裏舞台11『気炎万丈』をお送りしました。
※システィナ極東から更に東、ライザタニア西都でも動きがありました。長年、巣食っていた害虫駆除が第二王子の名の下で行われたのです。これにより野盗の巣窟と化していた西都は、今後、バルカン伯爵の政策によって文明人らしい街の風景を取り戻す事になります。
※ラブコメが足りない⁉︎
イケメンどこいった、オッサンばかり登場してるじゃん⁉︎
そう思ったのは貴方だけではありません。
私だってもっとイチャイチャしたの書きたい……!
そうだ!小話でも入れようっ、そうしよう!
次話も是非ご覧ください!




