※裏舞台6※友情と愛情1
「ーーなにぃ!?入れないとはどういう事かっ!」
陽射しが暖かく、花々が咲き乱れる東の森に、よほど似つかわしくない喧騒が響く。空気を震わす野太い声音。声と同時に飛ばされた唾。怒声に驚いた小鳥たちが木から飛び立ち、爽やかな筈の空気が暑苦しさを含む。春の麗かな陽気の中、甲冑を着込んだ四十絡みの男が花々に囲まれた美しい塔を目前に叫んでいる。しかも、正面で怒声を受けているのは成人前のうら若き乙女であった。
「そのままの意味ですわ」
柔らかな金の巻き毛を肩から垂らした乙女は、男の怒気に怯む事なく、凛とした佇まいで対峙していた。
「この塔には特殊な魔術が施されております」
乙女は眼前の白い塔を見上げると、空の様に蒼い瞳で塔に施された術を読み取ろうとした。正門を起点に施された魔術は《侵入防止》。その他、様々な術が重なり合いながら発動している。
「術は外敵から守る為に施されております。正確には中にある『何か』を守っているのですわ」
「外敵とは何を指すのか!?我々はコレを施した魔女と同じシスティナ国民ではないか。仲間であろう?それが何故ーー……」
同じ国に住まう者同士ならば皆仲間だとでも云わんばかりの男の主張に、乙女は僅かに眉をひそめた。『こういう勘違いをする愚か者から大切な『塔』を守っているのではないか』と。現に、塔の主は仲間からの裏切りによって連れ拐われたというのに。
「なんとかしたまえ!その為に君らをわざわざ王都より召喚したのだ」
「なんとかと申されましても……」
「君はコレを施した魔女とは懇意にしているのであろう?!ならば、コレを解呪する術をーーそのヒントなどを聞いてはいないのかね?」
乙女は困ったように眉をひそめ、口元を隠すかのように手を置いた。そんな乙女の心情などまるで忖度せず、男は自分勝手な主張に酔いしれている。
「閣下。失礼を承知で申し上げますが、魔導士は親しい間柄であっても、編み出した魔術を教え合う事はありませんわ。況してこの様な国家を外敵から守る為のものならば、それこそ親兄弟にも術の詳細など教えぬものです」
「何だと!?」
「既存の魔術ならば兎も角、魔導士が新たに生み出した魔術は生み出した魔導士のものですわ」
「ならば君も新たな魔術とやらを生み出して、この塔を覆う魔術を解呪したまえ!我々は一刻も早く、この塔を管轄下に納めねばならぬのだ」
無茶苦茶な!と乙女は内心叫びたい気分になった。自分が公爵令嬢でなければ、宰相閣下の息女でなければ、体裁など気にせずにこの無礼者に罵声を浴びせたに違いない。
この『東の塔』に術を施したのは現在、最も国家魔導士の地位に近いとされる等級9を持つ魔女なのだ。自分のような半人前が、『東の塔の魔女』の施した術を打ち破るような魔術を編み出せる訳がない。
もしも編み出せたとしても打ち破る事などしない。この『搭』を守らんとする魔女のーー友の為にも決して……
スカートの影でぐっと拳を握った乙女。プルプルと震えそうになる身体を戒めるように、ぐっと唇を引き締める。そんな憤怒に身を固くしていた乙女の肩をトンと背後から叩く者があった。はっと乙女が振り替えると、そこには乙女が敬愛してやまない兄の姿があった。
「無茶を申されますな、バルバトス隊長。塔に施された魔術は繊細なもの。その書き換えには相当リスクが伴いましょう。ならば、魔女候補生に無理難題を押し付けるのではなく、王宮に正式な申請を出し、宮廷魔導士に頼むが宜しいのではございませんか?」
「む……貴殿は……?」
「申し遅れました。私は王太子ウィリアム殿下直下の騎士、ジークフリード・フォン・アルヴァンド。殿下の命により罷り越しましてございます」
胸に手をあて優雅にお辞儀をする青年の金の髪が陽に輝く。白い騎士服を纏うどこぞの王子様のような青年の登場に、男ーーバルバトス隊長は目を輝かせた。しかし、バルバトス隊長の淡い期待もすぐに泡と消える事になる。
「おお!殿下の……殿下がご助力くださるか!?」
「いいえ、この塔はウィリアム殿下の管轄下にあります。私は勝手を働く閣下にご忠告参った次第であります」
「は?……忠告、だと!?」
バルバトス隊長の身体をあからさまな警戒心が包み込む。先ほどまでの友好的な態度は一変し、瞳には侮蔑感侮と嫌悪感とを孕んでいく。
「バルバトス隊長は国境警備隊の長なれど、塔の警護に口出す権限をお持ちではありません」
「なんだと!?『塔の魔女』が敵国へ拐われたなど由々しき事態ではないか!これは正に国防の一大事なるぞ?最早、塔の騎士団などに任せてはおけぬ!」
益々声を大きく荒げた隊長に、青年ーージークフリードはシッ!と自らの唇に指を当てた。
「お静かに。誰ぞに聞かれては困ります」
「ええい煩い!いち近衛風情が儂に口出しするなッ」
「私はウィリアム殿下の名代。私の言葉は殿下の言葉であります」
「その口調、如何にもアルヴァンド公爵家らしい。親も親なら子も子か!」
バルバトスの地位は隊長だが爵位は伯爵。本来なら公爵令息たるジークフリードに面と向かってイヤミを言える権利も権限も持ち合わせてはいない。ジークフリードはバルバトス隊長にアルヴァント公爵家を侮辱され強い苛立ちを覚えたが、ここでやり合うのは得策ではないとして、胸の内に憤慨を仕舞い込んだ。
「……閣下、再度一度申し上げます。『東の塔』は王太子殿下と『東の塔の騎士団』の管轄下にあります。また、次代『東の塔の魔女』の選定は王宮が致すところ。貴殿はその権限をお持ちではない。即刻この場の包囲を解き、王太子殿下の下へご出頭を。忠告が警告となる前に……」
「生意気な小僧め!」
「さあどうぞ」
「~〜〜~!? 兄妹揃って生意気な者たちだッ!!」
バルバトス隊長の嫌味に動じるどころか、春風のような爽やかな微笑を浮かべたジークフリードと乙女に向かい、隊長は苦虫を踏み潰したかのような表情でその場を立ち去っていった。
※※※
「大丈夫か、リディ?」
バルバトス隊長が部下を引き連れ、騎乗し駆けて立ち去るのを待って、ジークフリードは同じように隊長の背中を見送っていた乙女ーー愛妹リディエンヌに声をかけた。愛称で呼ばれた乙女はほっと一息吐くと青年騎士ジークフリードを見上げ柳眉を下げた。美しい顔には僅かに憂いが見られる。
「申し訳ございません、お兄様。お手間をとらせました」
「いや、これも仕事のうちだ。お前はあの男に無理矢理連れて来られたのだろう?『塔の扉を開けろ』とでも言われて……」
「ええ。初めはあの様に強行姿勢ではなかったのですが……」
この春16才になったばかりのリディエンヌは魔導士としては優秀な部類に入る。だが、まだ一介の術士の域を出ない。しかも、年齢によって持てる経験値から、あのような輩を相手取るのは難しいものがあった。
リディエンヌは兄ジークフリードから見ても聡明な才女であった。学園では優秀な成績を修めており、卒業後は宮廷にある魔術研究所に入る事は約束されている。また、現在は第三王子リヒト殿下の婚約者という地位を賜り、輝かしい未来まで開けている。王宮のパワーバランスを図った上の政略結婚である為、本人にとっては辛い一面も含むが、リディエンヌはアルヴァンド公爵家の一員として、また、国家に忠誠を誓うシスティナ貴族として、自分の役目を全うする気持ちを持っていた。
幸い、リディエンヌの夫となるリヒト殿下はリディエンヌに首ったけであるので、婚姻後も幸せな家庭が築けるとの予想ができており、兄ジークフリードとしてはその点においては一抹の不安もなかった。
「アレは国境警備隊の長にしては些か役不足だな?ねぇ、ジーク」
気配もなく背後から現れた人物に、ジークフリードはげっそりとした気分で振り返った。そこには自分の持つ容姿に似た青年が佇んでいた。
太陽に煌めく金髪はジークフリードよりもやや長く、大海原の様な蒼瞳はジークフリードよりやや薄い。だが背格好はほぼ同じであり、その年齢を感じさせぬ美貌と佇まいはジークフリードと良く良く似通っていた。ただ一点違うと云えば、その余裕綽々たる微笑であろうか。
「ご領主……見ていたのなら、サッサと出て来てくだされば良かったものを」
王子様然とした無駄に煌びやかな笑顔を振り撒きながら現れた青年は、アルカード領主カイネクリフである。
カイネクリフはアルヴァント公爵家に連なる血筋。ジークフリードの従兄弟という事もあり、容姿やその雰囲気が非常に似通っている。その事をジークフリードは物心ついた頃から疎んじていた。
カイネクリフは数多くの才を持つ者であり、貴族として、政治家としても尊敬すべき者だが、如何せん女好きが過ぎるのだ。『麗しい女性に出会えば取り敢えず口説く』というスタイルを持つカイネクリフは、これまでも数多くの浮世を流している。勿論、女性とのトラブルも常に伴っており、カイネクリフと容姿の似通うジークフリードは、そんな彼の犠牲者となる事が多かった。
「やだよ!あの大男に潰されちゃったらどうするの?暑苦しいし油っぽそうじゃないか?」
女性には無償の愛を注げるが男性にはとことん塩対応。根っからの女好きカイネクリフらしい言い分に、アルヴァンド兄妹は『嗚呼……』と目を細めた。
「アレは貴方の麾下である警備隊の長でしょう?」
「確かにそうだけど、アレを隊長に推したのは私じゃない。副宰相ランバート殿だ」
「ああ、あの狸が……?」
「そう、あの狸さ。目下、叔父上殿の頭痛のタネの」
思わず本音が零れたジークフリードにカイネクリフも同調した。二人の会話はなかなかに際どい内容なのだが、それを咎める者はこの場にはいない。カイネクリフに付き添ってきた領主補佐も、リディエンヌに付き添ってきた騎士たちも知らぬ存ぜぬを決め込んでいる。
現在、『東の塔』の周辺には『搭の騎士団』に属する騎士たちが集まり始めていた。彼らはバルバトス隊長の来訪によって身を潜めていた騎士たちは、リディエンヌの護衛の為に王家より貸し出されている近衛ーーリヒト殿下の采配だーーと情報交換をしている。
「平時にあって、国境を警備している分には邪魔にはならないのだけどねぇ」
バルバトス隊長はサン・マルバ砦を拠点とする国境警備隊の長であった。平時は『東の塔』を起点として南北に伸びる国境、その国境上に点在する各砦の警備をしている。警備隊は『塔の騎士団』の下請け組織の意味合いが強く、加えて警備隊は騎士団の下部に位置する事から、騎士団からの指示で動くのが常だ。本来なら、警備隊長が騎士団長に指示することは愚か、命令に外れて行動してはならない。だがこの日、バルバトス隊長はルーデルス団長を押し切ってーー正確には命令を無視してーー行動を起こしていた。
「警備に託けて地方へ飛ばしているからでしょう?」
「へぇ……知っていたのかい?」
「いいえ。まぁでも、貴方の考えそうな事ですので」
ジークフリードの言葉にカイネクリフは苦笑し顳顬を掻いた。
「そもそも警備隊は『塔の騎士団』の指揮下にあるからね。普段なら『塔の騎士団』ーーそれもルーデルス団長を押し除けて塔まで来る事なんて、ないのだけど……」
誰かに唆されたのかな?と、目線を明後日の方へ飛ばしたカイネクリフに、ジークフリードはジトリとした目線を投げた。
「『東の塔』に魔女が不在だと誰が伝えたのです?もしかして……」
「そりゃあ、あの狸に決まっている。副宰相権限で魔女候補生を送りつけてくるくらいだ。次期魔女に自身の息がかかった者を推したいと考えていても、不思議ではあるまいよ」
「なら、ここにリディがーーアルヴァンド宰相閣下のご息女がいるのはどうしてですか?」
「そりゃ、宰相閣下が権限を使って無理矢理捻じ込んだからなのではないかい?」
二人の視線がそれまで沈黙を守っていた乙女リディエンヌへと向けられた。リディエンヌは兄たちからの視線を一身に浴びるとニッコリと微笑んだ。その微笑は大変麗しく、春の花畑に舞う花の妖精のようだ。
「正解ですわ。カイネクリフ様」
「嗚呼、リディ……暫く会わない間に益々美しくなったね」
「ありがとうございます」
余程おべんちゃらに聞こえるカイネクリフの世辞に嫌な顔一つせず、リディエンヌはカイネクリフからの口づけを頬に受けた。その挨拶には久しぶりの再会を喜ぶ意味も含まれていた。
「でもまさか、君があの男を伴って塔に来るなんて、思ってもいなかったよ?」
眉根を潜めるカイネクリフにリディエンヌはフフフと口元を綻ばせた。
「この塔を管理する魔女様と懇意にさせて頂いている事は真実ですもの。それにバルバトス様はある意味単純なお方です。きっと、ランバート副宰相様より我が父アルヴァンド宰相閣下に媚を売りたいとお考えになったのでしょう」
「おお!言うようになったね。それでこそアルヴァンド公爵家の令嬢だ」
花も恥じらう美少女は再びニッコリと微笑むとスカートを摘まんでお辞儀をした。このように可憐な乙女さえ、他者に対して自分を偽って言葉巧みに誘導しているのだ。兄であるジークフリードはこのような愛妹を見た時、『やはり見た目に騙されてはならないな』などと思うのであった。
「私もこのような形でアルカードを訪れる事になるとは、思ってもおりませんでしたわ」
「ハハハ!私もだよ。もっと楽しいイベントのある時に来てもらいたかった。こんな時世下ではなくね」
「そうですね。私、アーリア様とご一緒にこの街を散策したかったですわ。きっと楽しい思い出となった事でしょう」
ここに在るべき魔女を思い描き、リディエンヌは頬に手を当ててホウと息を吐いた。『東の塔の魔女』アーリアとリディエンヌとはスイーツ仲間であり、身分や立場を越えた友情を育む友人同士であった。本来なら身分的にも友人となれる二人ではないのだが、ある事件をきっかけとして縁を繋ぎ、今ではとても仲の良い友人同士であった。リディエンヌはアーリアを姉のように慕っており、アーリアも不遜だと思いながらもリディエンヌを可愛い妹のように扱っていた。
「そう言えばルーデルス団長は?」
『東の塔』と『塔の魔女』とを守護する『搭の騎士団』が長ーールーデルス・ハル・ワーク。豪傑の名に相応しい騎士団長はバルバトス隊長の来訪にも関わらず、この場に姿を現していなかった。その事を訝しんだカイネクリフがリディエンヌに訪ねると、リディエンヌはスイっと白指を動かした。
「団長様ならば彼方に……」
「あんなところに……!魔術、なのか……?」
「いえ、あれはスキルですわ」
ルーデルス団長は木陰から姿を現すとアルカード領主カイネクリフへ向けて一礼し、その後、部下たちに向けて指示を飛ばし始めた。
「……それにしても、やはり塔の魔女候補である君でも入れないのかい?」
暫く騎士たちの動きに目を留めていたカイネクリフは徐に塔の扉へと視線を送ると、塔の魔女候補であるリディエンヌに尋ねた。リディエンヌはふるふると首を振ると、残念ながらと言葉を返した。
「この塔に魔術を施された魔女様は真実優秀な魔道士です。塔にさえ敵を侵入させなければ、魔術を解呪される事はまずありませんもの」
リディエンヌの視線は『東の塔』の扉、そして塔の周囲をぐるりと囲む石塀と正門に向けられた。正門の側には白木で立て札がなされており、立て札には達筆な字で『関係者以外立入禁止』と印字されている。この『関係者以外立入禁止』は文字通りの意味があり、塔に魔術を施した魔女と魔女の許しを得た者しか入れない仕組みであった。正門を含む『東の塔』全体には《侵入禁止》の魔術が施されており、許しのない者は入れぬのだ。それは『東の塔』と『塔の魔女』を守護する『東の塔の騎士団』の団員でも同じであった。魔女は、騎士団を『関係者』の部類に入れなかったのである。
「もしも、彼女の口からこの塔に施された魔術の解呪方法が漏れたなら……どうだい?」
「予測というよりも確信に近いのですが、私は漏れた所で問題ないと考えます。あの方が編まれた魔術を真に理解し、解呪に至る魔導士が彼の国にいるとは思えません」
「成る程ねぇ。だから王宮の腰も重いのかな……?」
「おそらくは。高位魔導士様ならばどうにかできましょうが、あの方たちが動かれる事は先ずないかと……」
「正確には動かせないのかな?」
「ええ。現にアーリア様の保護者である漆黒様も動かれておりませんもの」
リディエンヌの推測にカイネクリフはウンウンと唸った。魔術士の祖が生まれた魔導士国家システィナであっても、『東の塔』には手が出せぬ現実がある。そして、王宮はここが国防の要だと理解しているからこそ、下手な手は打たない。下手な手出しの結果、直ちに塔に施された《結界》が消えようものなら、即日にも他国ーーライザタニアとの戦闘に突入してしまうからだ。唯一できる事があるとすれば、拐われた魔女の施した魔術がいつ消えても対処できるように、魔術の重ねがけをする事くらいであった。そして、その為に魔女候補であるリディエンヌが呼ばれたという訳だ。
「アーリアの師匠……あぁ、あの方か。今頃、物凄く怒っておられそうだな……」
「当然ですわ!アーリア様は漆黒様の愛娘なのです。愛娘を拐われた父親が怒らぬ筈がございませんでしょう⁉︎」
ジークフリードは数度、顔を合わせた事のある魔女の師匠を思い出すなり、ぶるりと背を震わせた。
魔女の師匠とは、美しいぬばたまの髪と同色の瞳を持つ男性で、『漆黒の魔導士』との二つ名を持つ優秀な魔導士であった。この国で四人といない等級10の位を持つその魔導士は、国王陛下より『国家魔導士』の称号を賜っている。とても『優秀』の一言では片付けられぬ御仁であり、また、彼は魔宝具職人としても活躍しており、彼の創り出すアイテムは王侯貴族御用達にもなっている。
魔女は彼の魔導士の養い子であり、それこそ、目の中に入れても痛くないほど可愛がっている。にも関わらず、王宮・王家は愛娘である魔女を利用しているのだ。しかも、今回の事件ーー魔女が隣国へ拉致されてから一月近く、未だ目ぼしい進展もない。この状況は充分、漆黒の魔導士の怒りを買っても仕方ないものであった。本人を知るジークフリードからすれば、「隣国の前に自国が滅ぼされるのでは?」とも考えられ、内心、穏やかでいられなかった。
「私も、もうずぅっとカンカンなのですわ!アーリア様を攫ったライザタニアに、そして、アーリア様を救えぬシスティナに!」
「リディ……」
「ですが!ですが、漆黒様が座しておられるのです。私がしゃしゃり出る訳には参りません」
両手の拳を胸の前で握りしめ怒りに耐える愛妹リディエンヌに、ジークフリードは感心させられた。魔女を傷つけられ拐われた直後の自分よりも余程大人ではないか、と……。ジークフリードはリディエンヌの頭にそっと手を置くと、緩やかに撫でた。
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『裏舞台6:友情と愛情1』をお送りしました。
進展乏しい状況下、東の塔へ魔女候補が招集されました。それは王家ノ剣の名を持つ麗しい少女でした。
三人の美男美女たちの辛辣な会話に加わる勇気のある者は、この場にはいません。貴族の中でも公爵位を持つ彼らに逆らえる勇気のある者は、それほど存在しないのです。しかも、彼らが当代の魔女と友好的でもあるので、騎士たちも自然と彼らの味方となっているのです。
次話『友情と愛情2』も是非ご覧ください!




